フロートレスリレーとは?
電極棒を用いた電気伝導によって水位を検知する制御機器
【超解説】とても簡単に言うと何か?
タンク内の電極棒で水位を検知し、ポンプの自動運転・停止を制御する水位制御装置です。
1. 基本概要
そもそも何か
フロートレスリレー(フロートレススイッチ・電極式液面リレー)は、液体の導電性(水が電気を
通す性質)を利用して液面レベルを検知・制御するための制御機器です。
フロート(浮き)を使わないのが最大の特徴です。
なぜ必要なのか
トイレのタンクのように「物理的な浮き(フロート)」だけでポンプを制御しようとすると、
波立ちによる誤作動や、物理的にゴミが絡まって浮きが動かなくなるという、重大な機械的構造の
弱点があるからです。
2. 構造や原理
水を通して電流が流れる仕組み
一番長い棒(コモン:アース)と、短い棒(検知用)の間に交流の微弱な電圧(約8V程度)を
かけておきます。
水位が上昇して水面が両方の棒に触れると、水を伝って電気が流れ、リレーが「ON」になります。
直流を使わない理由
もし直流(乾電池と同じ方向)を流してしまうと、電気分解が起きて金属の棒がすぐに溶けて
無くなったり、表面がメッキされてボロボロになるため、必ず極性が入れ替わる「交流(AC)」で
動作させます。
3. 素材・形状・規格
プラグインタイプによるメンテナンス性
制御盤内に配置される「本体」部分は、手のひらサイズの透明なプラスチックの箱の形を
しており、古くなったらソケットから引っこ抜いて差し替えるだけで交換できる「プラグイン
(ピン)方式(8ピンや11ピン)」が主流です。
電極棒とセパレータ
水に浸かる「棒(電極棒)」は、錆びに強くて衛生的なステンレス(SUS304やSUS316等)が
使われます。
波で棒同士が接触してショートしないよう、途中にプラスチックの車輪のような「セパレータ
(保持器)」を取り付けます。
4. 主に使用されている場所
ビルの受水槽や高架水槽(きれいな水)
飲み水を一旦溜めておく地下の大きなタンク(受水槽)において、水がいっぱいになったら市の
水道管からの給水を止め、水が減ってきたら再びバルブを開けて水を補充する「給水自動制御」と
して活躍します。
地下ピットの湧水槽・汚水槽(汚い水)
建物の最下層に雨水や湧水、トイレの汚水が溜まるコンクリートの槽において、一定の水位まで
汚水が溜まったら自動でポンプを起動し、下水道へ強制的に吐き出させる「排水自動制御」の
中核を担います。
5. メリット・デメリット
メリット(長所)
波立ちや泡立ちによる「チャタリング(ポンプがカチャカチャと短期間でON/OFFを繰り返して
壊れる現象)」を防ぐタイマーや保持回路が内蔵されており、物理的な可動部(浮き)が
ないため、機械の詰まりによる故障が置きません。
デメリット(短所・弱点)
「水が電気を通すこと」を前提としているため、純水(電気を通さない全く不純物のない水)や油
(絶縁物)には使用できません。
また、汚水で棒にヘドロがべっとりと被膜を作ってしまうと、電気が通らなくなり水位を
検知できなくなります。
6. コスト・価格の目安
導入や更新にかかる費用
国内シェアトップのオムロン(OMRON)製「61Fリレー」が業界標準です。
機器自体は比較的安価であり、定期的な消耗品として捉えられています。
おおよその相場(機器本体のみ・工賃除く)
- 基本ユニット(オムロン61F-G等):4,000円〜8,000円前後
- コンパクト・プラグイン型(61F-11等):3,000円〜6,000円前後
- 電極保持器(棒とセット・1箇所分):約5,000円〜1万円程度
合計目安:本体だけでなく、水槽側の電極棒のサビ落としや交換工事費(高所・狭所作業費)を
合わせた数万円〜十数万円がメンテナンスの相場となります。
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期(推奨交換時期)
フロートレスリレー本体は、内部の小さな接点がスパークで焼け焦げるため、約7年〜10年での
予防交換が推奨されます。
電極棒の清掃(ヤスリがけ)は、汚水槽なら半年に1度、清浄な受水槽でも1年に1度は
必須メンテナンスです。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
微弱な信号回路であるため、周囲の強い電気から出る「ノイズ」を拾うと
水がないのにリレーが動いてしまいます。それを防ぐため、必ず電極配線には
シールド線(金属の網で覆われたCVVS等のノイズ対策用電線)を使用します。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
ノイズによる誤検知で深夜に突然ポンプが空回りを開始して焼け焦げるか、清掃不足で水位を
検知できずポンプが停止したままになり、地下ピットから汚水が溢れ出して電気室等を水没させる
壊滅的な損害を引き起こします。
8. 関連機器・材料の紹介
フロートレスリレーを収容したり、共に連携して動く動力盤内の主要機器です。
9. 多角的なQ&A(20連発)
ビルの中で水を使うと、なぜ自動でポンプが回るの?
タンクの中の水位の変化を金属の棒(電極棒)が常に監視しており、指定の水位になると
「フロートレスリレー」が指令を出すからです。
水に電気を通すと感電しませんか?
流れているのはたったの数ボルトという、人体には感じない程度のごくわずかな電流の
ため、タンクの水に触れても感電することはありません。
なぜ浮き(トイレの浮き玉)を使わないのですか?
大きな水槽になると、波の揺れでチャプチャプと誤作動したり、ゴミが浮きに
引っかかって動かなくなるトラブルが多発するからです。
盤の中に光っている小さな透明の箱は何ですか?
それがフロートレスリレー本体です。
水位の異常や作動状態をLEDのランプでお知らせしてくれます。
水の中の棒は一生サビないのですか?
ステンレス製でサビには強いですが、長年の汚れや不純物の付着で表面が被膜で覆われる
ため、定期的に磨く(清掃)必要があります。
電極棒(E1〜E3)のつなぎ間違いを防ぐ覚え方はありますか?
数字の大きいE3が一番長く一番下(アース・コモン)で、数字の小さいE1が一番短く一番
上(満水等)と覚えます。EがEarth(地面)の延長です。
試運転時、水がない状態での動作テスト方法は?
端子台やプラグインソケット部分で、E1やE2の端子とE3(コモン)端子を短い
テスト用配線で「短絡(ショート)」させれば、水面が触れた状態を擬似的に作れます。
配線距離が長すぎる(数百メートル)とどうなる?
配線の「静電容量(線がコンデンサーになってしまう現象)」により、水に
浸かっていなくても電気が漏れて誤検知する「漏れ電流」障害が起きます。
長距離対策の「高感度用・遠距離用」を通常時に使うと?
感度が高すぎるため、普通の水(雨水など)に使うと僅かな湿気や結露だけで
反応してしまい誤作動の嵐になるため、絶対に純水用以外で使ってはいけません。
電極の棒を短く切りたい時の正しい金ノコの使い方
ステンレスは切りにくいためパイプカッター等は使わず、金ノコで垂直に
切り落とした後、必ずサンダー等でバリを落として滑らかにします。
5本棒(E1〜E5)のフロートレスを入れる場合の設計上の役割は?
上部から順に、E1(満水警報)、E2(ポンプ起動)、E3(ポンプ停止)、E4(渇水警報)、
E5(一番下のコモンアース)という完璧な5段構えの制御を行うためです。
汚水だけでなく、油が混ざる水槽での設計上の注意点は?
油は電気を全く通さないため、もし油膜が棒に張り付くと動作不全に陥ります。
油が多い場所ではフロートレスをやめ、物理的なボールフロート式に変更します。
波立ちが激しい水槽用の「2線式リレー」とは何ですか?
配線コストを減らしつつ、内部の抵抗器を利用して水位を検知する特殊なタイプですが、
配線極性を間違えると全く動かないため職人への注意喚起が必須です。
電極棒にカバーが付いている「防波管」を採用すべき時は?
給水配管からの水の落ち口が棒のすぐ近くにあり、水飛沫が年中棒に直接かかって
誤動作する(チャタリング)懸念が強い場合に採用します。
本体の「高感度」と「低感度」の選定基準は?
普通の水道水や生活排水なら「一般用」、雨水や純水(抵抗値が高い)なら「高感
度用」、海や温泉水といった不純物が多すぎる場合は「低感度用」を選びます。
点検会社から「ヤスリがけが必要です」と言われ、なぜか高額でした。
電極棒の清掃は地下の深いピットに入ったり足場を組む必要があり、
酸素欠乏危険作業などの労務費や安全対策費がかかるため、作業代が高額になります。
リレーの中でパチパチと音がして、透明の箱が黒く焦げています。
寿命で接点が焼き付く直前です。
完全にくっついて離れなくなると、水が減ってもポンプが永遠に止まらずに空転して
モーターが壊れるため、すぐ交換です。
汚水槽が溢れたのに、満水警報が鳴りませんでした。
一番上の「E1(満水用」の棒に、ゴミやトイレットペーパーの塊がこびりついて乾燥し、
電気を絶縁(通さなく)してしまったことが原因です。
盤に異常ランプが何もついていないのに水が出ません。
電極の根本(ホルダー部分)でネジが緩んで断線したりサビ落ちているか、
フロートレスリレー本体そのものの基盤が寿命で完全に沈黙している可能性があります。
オムロン製の「61Fリレー」が急に廃盤になることはありますか?
数十年続く業界のデファクトスタンダード(世界標準)であり、後継機は必ずピンの
配列まで互換性を持たせて製造されるため、交換部品の欠品の心配はありません。
参考規格・出典
- 内線規程 JEAC 8001-2022
- 電気設備技術基準・解釈(経済産業省)