「単相」と「三相(動力)」の違いとは?
単相100V/200Vと三相200Vの違いと用途の解説
【超解説】とても簡単に言うと何か?
「単相」は、自転車のペダルを1人の人間がこぐように電気を送る方式で、家庭の家電を
動かすのに適しています。
「三相(動力)」は、ペダルを3人の人間がタイミングをずらしながら同時にこぐような方式で、
工場の機械や巨大なエアコンのモーターを少ない電気代で超パワフルに回すことができる業務用の
特別な電気です。
1. 基本概要
建物の電気には2つの大きな契約がある
私たちが普段使っている電気には、大きく分けて「単相(たんそう)」と「三相(さんそう)」と
いう2つの種類があります。
一般家庭のコンセントにきている電気はすべて「単相(100Vまたは200V)」です。
一方で、コンビニにある大きな業務用冷蔵庫や、ビルの上の巨大な室外機、工場の
ベルトコンベアなどのモーターを回しているのは「三相200V(通称:動力)」という別のルールで
作られた電気です。
電気工事や設備の現場では、この2つは契約メーターから配線の色まで全く異なる別物として
厳格に扱われます。
2. 構造や原理
単相交流の波(波が1つ)
コンセントの電気はプラスとマイナスが1秒間に50回〜60回入れ替わる「交流」という波の形を
しています。単相は、この波(交流の波)が「1つ」だけ流れてくる電気です。
電圧がゼロになる瞬間があるので、実は白熱電球などは1秒間に何十回もチカチカと
消えたり点いたりしています(早すぎて人間の目には見えません)。
三相交流の波(波が3つ)
三相は、1つの電線の中に「タイミングを120度ずつずらした3つの波」を同時に送り込む方
式です。
波が3つあるということは、どれか1つの波の電圧が落ち込んでも、必ず他の2つの波がピークに
近い状態であるため、常にモーターを全力で押し続ける力(途切れないパワー)を
生み出すことができるのです。
3. 素材・形状・規格
単相(100V/200V)の配線方式
一般家庭に引き込まれるのは「単相3線式(単3)」という方式です。
電柱から「赤・白・黒」の3本の線が家に入ってきます。
真ん中の「白(中性線)」と「赤」、あるいは「白」と「黒」を組み合わせると【100V】の電気が
取り出せます。
そして、一番端の「赤」と「黒」を組み合わせると【200V】(家庭用200Vエアコンや
IHクッキングヒーター用)の電気が取り出せるという、とても賢い仕組みです。
三相(200V)の配線方式
工場などに引き込まれる三相は「三相3線式」と呼ばれます。
「赤・白・黒(またはR・S・T)」の3本線で構成されており、どの2本を組み合わせても常に
【200V】の極めて強力な電圧がかかります。
そのため、感電した際のリスクも単相100Vに比べて格段に跳ね上がります。
4. 主に使用されている場所
単相の活躍場所
一般的な戸建て住宅、マンションの各部屋、オフィスの照明、パソコン用コンセントなど、
「コンセントにプラグを挿して使うもの」はほぼ100%単相です。
三相(動力)の活躍場所
高層ビルのエレベーター、オフィスビルの天井にある店舗用・業務用エアコン、スーパーの
ショーケース冷蔵庫、工場の工作機械、農業用の巨大なポンプなど、「重いものを延々と
回し続けるモーター」には例外なく三相動力が使われています。
5. メリット・デメリット
三相(動力)の圧倒的メリット:モーター効率の良さ
三相最大のメリットは「モーターの構造が超シンプルになり、故障しにくく、力強くなる」
ことです。
波が常に重なり合って電気が流れるため、単相モーターのように「最初の一回転目を回すための
補助パーツ(コンデンサー等)」が不要で、電源を入れた瞬間に自力で強力なパワーで回り
始めます。
また、同じパワーを出す場合、単相に比べて配線の太さを細くできる(銅の節約になる)ため、
設備コストが安くなります。
三相(動力)のデメリットと家庭における単相の必要性
三相のデメリットは「一般家電がそのまま使えない」「基本料金が高い」ことです。
一般家庭のテレビやパソコンなどの家電は、すべて「単相100V」を前提に内部の回路が
設計されています。
三相200Vのコンセントにこれらを接続すると、設計電圧の2倍にあたる200Vが電源回路に
直接流れ込み、コンデンサーやICチップが一瞬で焼け焦げて破壊されます(これは三相の
「パワー」の問題というより「電圧の不一致」が原因です)。
なお、大規模なデータセンターのサーバーなどは三相200Vから整流・変換して
使用されていますが、これは専用の電源装置を介しているためであり、一般の
コンセント向け家電をそのまま使えるわけではありません。
家庭に無理に三相を引いても使える家電がありません。
6. コスト・価格の目安
「従量電灯(単相)」と「低圧電力(三相)」の電気料金の逆転現象
電力会社との契約において、単相は「従量電灯」、三相動力は「低圧電力」という契約に
分かれます。
動力は、工場向けに設計されているため「基本料金がとても高いが、使った分の電気代
(従量料金)はとても安い」という独特な料金体系になっています。
おおよその電気代の特徴(※電力会社により異なります)
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単相(従量電灯):基本料金は安い(数百円〜千円程)。
しかし、使えば使うほど1kWhあたりの単価が跳ね上がる。 -
三相(低圧電力):基本料金が高い(数千円〜1万円以上)。
しかしモーターを24時間回し続けても1kWhあたりの単価が安い。
合計目安:24時間空調を回すコンビニや工場では、動力を引いた方がトータルの電気代は劇的に
安くなります。
逆に、たまにしかエアコンをつけない場所で動力を契約すると、基本料金だけで赤字になります。
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
モーターの欠相(けっそう)事故
三相動力のモーターの寿命自体は10年〜20年と非常に長いです。
しかし、三相特有の「絶対にやってはいけない事故」があります。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
ブレーカーのネジの緩みや電線の断線で、三相(3本)のうち1本だけ電気が来ていない状態になることを「欠相(けっそう)」と言います。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
欠相状態でスイッチを入れると、モーターはうまく回れずにうなり声を上げ、残りの2本の線に
異常な大電流が流れます。
そのまま数分放置すると、モーター内部のコイルが耐えきれずに発火・焼損し、高額なモーターが
完全に一撃でスクラップになります。
(これを防ぐために、最近のモーターブレーカーには欠相保護機能がついています。)
8. 関連機器・材料の紹介
三相コンセントや、契約に関する関連機器です。
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動力コンセント(三相コンセント):家庭用コンセントとは全く違う形状の、4つの穴(あるいは
3つの大きな刃)を持つ黒い特殊なコンセント。
間違って家庭用機器を挿せないようになっています。
▶ 詳細記事はこちら -
インバーター(周波数変換装置):三相モーターの回転速度を、電気の波(周波数)を自由に
いじることで「超低速〜超高速」まで滑らかにコントロールする魔法の装置。
▶ 詳細記事はこちら -
高圧受電設備(キュービクル):電柱にあるトランスを経由せず、自前で6600Vの電気を受け取り、
ビル内で大量の「単相」と「三相」を作り出すための鉄の箱。
▶ 詳細記事はこちら
9. 多角的なQ&A(20連発)
家のエアコンを200Vにしたいのですが、動力の契約が必要ですか?
いいえ、不要です。
一般家庭のエアコン用200Vは「単相200V」と呼ばれるもので、いまの電気契約
(単相3線式)のまま、ブレーカーの切り替え工事だけで使用できます。
動力(三相)のコンセントに、変換プラグを使ってスマホの充電器を挿せますか?
絶対に挿してはいけません!スマホの充電器は単相100V用です。
三相の強力な200Vが基板に直接流れ込み、一瞬でコンデンサが破裂して火災になります。
電圧と相の違いは変換プラグでどうにかなるものではありません。
町工場をやめるので、動力を解約したいです。
電力会社へ連絡し、低圧電力(動力)のメーターを取り外してもらう廃止手続きを
行ってください。
これを行わないと、機械を使っていなくても毎月高い基本料金が請求され続けます。
単相100Vで動く業務用冷蔵庫と、三相200Vで動く冷蔵庫、どちらを買うべき?
飲食店などで24時間電源を入れっぱなしにするなら、三相200V(動力契約)の方が
電気代のランニングコストは圧倒的に安くなります。
初期費用(動力線の引き込み工事費)と数年間の電気代削減幅を天秤にかけて計算します。
「単相」と「三相」はどうやって見分けますか?
一番簡単な見分け方はメーターの数です。
一般的な店舗の壁を見ると「従量電灯(単相)」のメーターと「低圧電力(三相)」の
メーターが2つ並んでついていれば、両方の電気が来ている証拠です。
三相モーターの配線を繋いだら、逆回転してしまいました。
三相のうちの2本(例えば赤と黒)の結線を入れ替えると、回転の磁界方向が逆転し、
正回転に戻ります。
ポンプなどを逆回転させると水が吸えなかったり部品が破損したりするため、
必ず通電前に「検相器」で相順(R-S-T)を確認してください。
動力のアース線を繋ぎ忘れるとどうなりますか?
三相200Vは家庭用の100Vに比べて対地電圧(地面との電位差)が高く、漏電した際に
金属フレームに触れると人体に致死的な電流が流れます。
D種接地工事は法律上絶対に省略してはいけません。
ブレーカーの容量を計算する時、単相と三相で計算式は違いますか?
違います。
単相の電力(W)=電圧(V)×電流(I)ですが、三相の場合は「電圧×電流×ルート3
(約1.732)」という係数がかかります。
同じアンペア値でも三相の方が1.7倍大きな出力を扱っていることになります。
三相3線から単相100Vを無理やり取り出す裏ワザはありますか?
昔は「変圧器(トランス)」をかませて動力線から単相を取り出す契約違反(盗電に近い
行為)が横行しましたが、現在では電力会社のスマートメーターや厳格な検査ですぐに
発覚し、違約金や契約解除の対象になるためやってはいけません。
VVFケーブルで三相200Vの配線をしても良いですか?
VVFの3芯(黒・白・赤)を使って動力の配線を行うこと自体は物理的に可能であり、
一部の内線工事でも規定範囲内で行われますが、動力専用としては耐熱性や色識別の
観点から「CVケーブルの3芯(黒・白・赤、または黒・赤・緑)」を使用するのがプロの
セオリーです。
新たにコンビニを建てる際、動力の引き込みはいつ申請すべきですか?
建柱(電柱を立てる)が必要なケースや、近隣のトランスの容量が不足していて
電力会社側の工事(外線工事)が発生する場合、数ヶ月待ちになることがあります。
店舗のオープン日に間に合わないという大クレームを防ぐため、受電申請は着工後
最優先で行います。
電灯盤と動力盤はなぜ分けて設置するのですか?
電圧の系統が全く違うため、混触(ショート)事故を防ぐことと、電気契約上メーターが
別になるためです。
大きな店舗では、壁掛けの電灯盤(照明用)と、床置きの動力盤(空調・冷蔵用)を
完全に分離して設計します。
三相200Vと三相400Vの違いは何ですか?
大規模工場や超大型チラー(空調熱源機)などで使用されます。
電圧を400V(2倍)に上げることで、同じ電力を送る際の電流が半分になり、ケーブルの
太さを細くして設備コストを激減させることができます。
ただし感電の危険度はさらに上がります。
インバーターを入れると高調波ノイズが出ると言われました。対策は?
インバーターは波形を人工的に切り刻むため、電気の波に「高調波」と呼ばれるノイズが
混ざり、周囲のパソコンや精密機器を誤作動させます。
ACL(交流リアクトル)やノイズフィルターを盤内に組み込んでノイズを打ち消す設計が
必要です。
メガテスト(絶縁抵抗測定)の基準値は単相と同じですか?
対地電圧が変わります。
使用電圧が300V以下の場合、対地電圧150V以下(単相100Vなど)は「0.1MΩ以上」、
対地電圧150Vを超える場合(三相200Vなど)は「0.2MΩ以上」という法的な基準値
(電気設備技術基準)が定められており、厳格にクリアする必要があります。
動力の基本料金を下げる方法(主開閉器契約)とは何ですか?
「負荷設備契約(モーターのカタログ馬力の合計で契約)」ではなく、「主開閉器契約
(メインブレーカーのアンペア数で契約)」に変更する手法です。
すべての機械を同時にフル稼働させない施設の場合、メインブレーカーの容量を絞る
ことで基本料金を合法的に大幅に下げることができます(電子ブレーカーの導入等)。
キュービクルの点検で「コンデンサーから異音がする」と言われました。
放置するとどうなりますか?
進相コンデンサーの劣化です。
三相モーターを使用すると生じる「無効電力(無駄な電気)」を打ち消し、電気代の
ペナルティを防ぐ大切な機器ですが、油が漏れたり膨張したりしたコンデンサーを
放置すると最後は大爆発・ショートしてビル全体が波及事故で全停電します。
テナントの飲食店が「エアコンが冷えない」と言っていますが、ファンは回っています。
三相エアコンの室外機にある「圧縮機(コンプレッサー)」のモーターだけが過大電流で
停止(サーマル作動)している可能性があります。
ただの送風機になっている状態で、これはフロンガスの漏れか、室外機の放熱不良
(ゴミ詰まり等)が原因のケースが多いです。
三相モーターのベアリングの寿命はどれくらいですか?
稼働環境によりますが、おおむね20,000〜30,000時間が交換の目安です。
「キーン」「ガラガラ」という異音がし始めたら赤信号で、そのまま固着(ロック)
するとモーター本体まで焼き付き、修理費が数倍に跳ね上がります。
テナントを入居させる際、「動力は何kWまで使えますか?」と聞かれました。
ビルの電灯盤とは別の「動力盤」のメインブレーカーの容量(アンペア数)、あるいは
その建物専用に割り当てられたトランス容量から計算します。
テナントが大型のピザ窯や製麺機などを持ち込む場合、ビルの設備容量を
超えてしまうことがあるため、事前に「電気容量調査」を電気主任技術者等に
依頼してください。
参考規格・出典
- 電気設備技術基準・解釈(経済産業省)
- 内線規程 JEAC 8001-2022