UPS(無停電電源装置)とは?
瞬断を許さないサーバー等を守る無停電電源装置(UPS)
【超解説】とても簡単に言うと何か?
停電が起きた瞬間、内蔵の蓄電池から電気を出してコンピューターやサーバーを守る「電源の
ボディーガード」です。
人間には気づかないほど短い停電(瞬停)でも、パソコンは壊れてしまうため、0秒で切り替わる
バックアップ電源として欠かせません。
1. 基本概要
そもそも何か
UPS(UninterruptiblePowerSupply)は、日本語で「無停電電源装置」と呼ばれます。
商用電源が停電や瞬時電圧低下を起こした際に、内蔵または外付けの蓄電池から即座に電力を
供給し、接続された機器を無瞬断で運転継続させる電源設備です。
サーバー室やデータセンター、病院の医療機器、工場の生産設備など「一瞬たりとも電気が
途切れてはならない」機器の上流側に設置されます。
なぜ必要なのか
コンピューターやサーバーは、たった数ミリ秒(1/1000秒)の停電でもデータの消失やOS破損を
引き起こすことがあります。非常用発電機は停電から起動まで10〜40秒程度かかるため、その
空白時間を埋めるのがUPSの役割です。
また、雷サージや電圧変動からも機器を保護する機能を持ち、電源品質を安定させる
コンディショナーとしても機能します。
非常用発電機と組み合わせることで、長時間の停電にも無瞬断で対応できる信頼性の高い
システムを構築できます。
2. 構造や原理
UPSの基本構成
UPSは主に以下の4つの要素で構成されています。
-
整流器(コンバーター):商用電源のAC(交流)をDC(直流)に変換して蓄電池を充電し、同時に
インバーターへDC電力を供給します。 -
蓄電池:エネルギーを蓄えるバッテリー。
鉛蓄電池が主流ですが、近年はリチウムイオン電池の採用も増えています。
一般的な保持時間(バックアップ時間)は5〜15分程度です。 -
インバーター:蓄電池からのDC電力を高品質なAC電力に変換し、負荷機器に供給します。
サイン波(正弦波)出力が基本です。 -
バイパス回路:UPS本体のメンテナンスや故障時に、商用電源から負荷に直接給電するための
迂回回路です。
給電方式の種類
UPSにはの主な給電方式として以下の3種類があります。
-
常時インバーター給電方式(オンライン方式):常に整流器→インバーターを通して給電する
最高品質の方式。
停電時も切替え時間ゼロで蓄電池給電に移行します。
データセンターや大規模サーバー室に採用されます。 -
ラインインタラクティブ方式:通常は商用電源を直接供給し、電圧変動時はトランスで補正、
停電時にインバーターに切り替える方式です。
切替え時間は数ミリ秒で、中規模のサーバーに適しています。 -
常時商用給電方式(オフライン方式):通常は商用電源をそのまま通過させ、停電時のみ
蓄電池→インバーターに切り替える最もシンプルな方式。
切替え時間が10ms程度あり、デスクトップPC等に使われます。
3. 素材・形状・規格
外観形状と素材
容量によって形態が大きく異なります。
-
タワー型(0.5〜3kVA級):デスクの横やサーバーラックの脇に置く据置型。
PC1台やNAS程度を保護する小型タイプです。 -
ラックマウント型(1〜10kVA級):19インチサーバーラックに収納する薄型。
サーバー室で最も多く見られるタイプです。 -
自立型(10〜500kVA級):電気室に設置する大型キャビネット。
ビル全体のサーバー室や工場のクリーンルーム等に使われます。
種類や関連規格
JISC4411-3「無停電電源装置(UPS)」に性能・試験方法が規定されています。
IEC62040シリーズが国際規格で、JISはこれに準拠しています。
容量はVA(ボルトアンペア)またはkW(キロワット)で表記されます。
力率0.9〜1.0の場合、概算として10kVA≒8〜10kWとなります。
4. 主に使用されている場所
使用される施設
- データセンター・サーバー室
- 病院(ICU、手術室、医療情報システム)
- 金融機関(銀行ATM、証券取引システム)
- 通信基地局・放送局
- 工場の生産管理システム・クリーンルーム
- 官公庁・防災拠点の情報通信設備
- 一般オフィスのサーバー・NAS
具体的な設置位置
小型のUPSはサーバーラック内またはデスク横に設置されます。
中〜大型のUPSは電気室やサーバー室の専用エリアに設置し、分電盤の負荷側に接続されます。
大規模施設ではキュービクル式高圧受変電設備の二次側(低圧側)にUPS盤が設置されるケースが
一般的です。
5. メリット・デメリット
メリット(長所)
-
無瞬断給電:常時インバーター方式なら0秒、他の方式でも数ms以内で蓄電池給電に切り替わり、
接続機器を保護します。 -
電源品質の安定化:電圧変動・周波数変動・ノイズを除去し、高品質な正弦波電源を負荷に
供給します。 -
発電機との連携:発電機が起動するまでの空白時間をカバーし、長時間停電にも無瞬断で対応する
冗長システムを構築できます。 - サージ保護:雷サージなどの過渡的な過電圧から接続機器を保護する効果もあります。
デメリット(短所・弱点)
-
蓄電池の寿命と交換コスト:鉛蓄電池の寿命は3〜5年のため定期的な交換が必要で、大型UPSの
場合は数十万〜数百万円の費用がかかります。 -
発熱と設置スペース:蓄電池は温度管理が必要で、空調設備のある専用室が必要になる場合が
あります。
設置面積もかかります。 -
バックアップ時間は有限:UPS単体でのバックアップ時間は一般的に5〜15分程度。
長時間の停電には発電機との組み合わせが必須です。 -
変換効率によるエネルギー損失:常時インバーター方式では電力変換ロスが3〜10%程度発生し、
大容量になるほどランニングコストが増加します。
6. コスト・価格の目安
導入や更新にかかる費用
おおよその相場(機器本体)
- 小型タワー型(0.5〜1.5kVA):約3〜15万円
- ラックマウント型(3〜10kVA):約30〜150万円
- 大型自立型(50〜200kVA):約500〜3,000万円
- 蓄電池交換費用(大型):1回あたり約50〜300万円(3〜5年ごと)
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期(推奨交換時期)
UPS本体の推奨更新周期は10〜15年です。
蓄電池は鉛蓄電池で3〜5年、リチウムイオン電池で8〜10年が交換目安です。
インバーター等の電子部品の経年劣化やファンの摩耗もあるため、本体は蓄電池の2〜3回目の
交換時期に合わせて更新を検討してください。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
「まだ動いているから」と、推奨寿命を大幅に超えた蓄電池を
使い続けること。蓄電池は劣化すると停電時のバックアップ能力が
ゼロに近くなり、UPSを設置している意味がなくなります。
「コンセントが空いているから」と電気ケトルやヒーターなど
大電力の機器をUPSに接続すること。UPSが過負荷で停止し、
保護すべきサーバーもろとも電源が切れます。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
蓄電池を交換しないまま使用すると、いざ停電が起きた際にバックアップ時間が数秒しかなく、
サーバーが即座にシャットダウンします。
RAID構成のストレージでもデータ破損が発生し、復旧に数日〜数週間を要する深刻な
システム障害に至ります。
最悪の場合、劣化した鉛蓄電池は内部短絡により膨張・液漏れを起こし、火災の原因に
なることもあります。
蓄電池からは充電時に水素ガスが発生するため、換気不足の環境では重大な安全上の
リスクとなります。
8. 関連機器・材料の紹介
UPSと密接に連携する関連機器を紹介します。
-
蓄電池(バッテリー):UPSのエネルギー源。
鉛蓄電池またはリチウムイオン電池が使われ、寿命管理がUPS運用の最重要課題です。
▶詳細記事はこちら -
非常用発電機:長時間停電時の電力バックアップを担う設備。
UPSが「瞬間」を守り、発電機が「長時間」を守る組み合わせです。▶詳細記事はこちら -
キュービクル式高圧受変電設備:高圧電力を低圧に変換する設備。
大型UPSはキュービクルの二次側に接続されるのが一般的です。▶詳細記事はこちら
9. 多角的なQ&A(20連発)
UPSと家庭用のポータブル電源は何が違いますか?
UPSは停電を「検知して0秒で切り替わる」のが特徴です。
ポータブル電源は手動で切り替えるため、パソコンは停電の瞬間に落ちてしまいます。
自宅のパソコンにもUPSは必要ですか?
重要なデータを扱う場合や、停電の多い地域では小型UPS(0.5kVA、約1〜3万円)の
導入を推奨します。特にNASやデスクトップPCの保護に効果的です。
UPSのバッテリーが切れたらどうなりますか?
バックアップ時間を超えるとUPSからの給電が停止し、接続機器の電源が切れます。
多くのUPSはバッテリー残量低下時に警告音を鳴らし、PCを安全にシャットダウンする
機能があります。
UPSから「ピーピー」と音が鳴り続けるのはなぜですか?
蓄電池の劣化警告、過負荷警告、または商用電源異常のいずれかを示すアラームです。
取扱説明書でアラームの種類を確認し、早めに対処してください。
UPSに電子レンジやドライヤーをつないでも大丈夫ですか?
絶対にやめてください。
電子レンジやドライヤーは消費電力が非常に大きく、小型UPSの定格を簡単に超えます。
UPSが過負荷で停止し、保護すべき機器まで落ちます。
UPSの入力側と出力側のブレーカー選定は?
入力側はUPSの定格入力電流の1.25倍以上のMCCBを選定します。
出力側はUPSにMCCBが内蔵されている場合が多いため、メーカー仕様図で確認してください。
UPSの接地工事で注意すべき点は?
D種接地が基本ですが、ノイズ対策として専用の接地極を設ける場合があります。
一般接地と混用すると接地電位が不安定になるため、メーカー指示に従ってください。
蓄電池室の換気はどうすべきですか?
鉛蓄電池は充電中に微量の水素ガスを発生するため、火花や裸火を避け、換気設備を
設けることが必要です。蓄電池室の換気量は消防法の基準に従ってください。
UPSの搬入で注意すべきことは?
大型UPSは蓄電池を含めると数百kg〜数トンになります。
床荷重の確認、搬入経路(エレベーター寸法・廊下幅)の事前確認、搬入用の仮設養生が
必須です。
UPSの試運転時のチェック項目は?
入出力電圧・周波数の測定、蓄電池試験(模擬停電でのバックアップ時間確認)、
バイパス切替試験、アラーム動作試験が基本です。
負荷を接続した状態での動作確認が重要です。
UPSの容量選定の考え方を教えてください。
接続する全負荷の合計消費電力にデマンドファクター(需要率)を乗じ、さらに将来の
増設分として20〜30%の余裕を持たせます。
力率や効率も考慮してVA容量を算出してください。
冗長構成(N+1、2N)とは何ですか?
N+1は必要台数Nに予備1台を追加する構成、2Nは全体を二重化して一方が全停止しても
給電継続する構成です。データセンターではTier(ティア)に応じて冗長度が定められます。
リチウムイオン電池と鉛蓄電池、どちらを選ぶべき?
リチウムイオンは寿命が長く(8〜10年)設置面積も小さいですが、初期コストが鉛の
2〜3倍です。
ライフサイクルコスト(LCC)で比較すると、大型UPSではリチウムが有利な場合が
増えています。
UPS室の空調設計で注意すべき点は?
蓄電池の推奨使用温度は20〜25℃です。
温度が10℃上がると寿命が約半分になるため(アレニウスの法則)、専用の空調設備を
設置し、温度管理を徹底してください。
バイパス運転中はUPSの保護機能がなくなりますか?
はい。バイパス運転中は商用電源が直接負荷に供給されるため、停電・瞬停・サージに対する
保護が効きません。バイパスはメンテナンス時のみ短時間の使用に限定してください。
UPSの定期点検では何を確認しますか?
蓄電池の内部抵抗測定、端子電圧測定、外観点検(膨張・液漏れ)、冷却ファンの
動作確認、アラーム履歴の確認が基本です。年1回以上の蓄電池放電試験も推奨されます。
蓄電池の「劣化」はどう見分けますか?
内部抵抗値の上昇が最も信頼性の高い指標です。
新品時の値に対して1.5倍以上になったら交換推奨です。
外観上は電池の膨張・変形・液漏れも劣化のサインです。
蓄電池の廃棄はどうすればよいですか?
鉛蓄電池は産業廃棄物(特別管理)に該当します。
許可を持つ産廃業者に委託し、マニフェスト(管理表)を発行・保管してください。
鉛のリサイクル率は非常に高いです。
UPSの更新時に停止時間は発生しますか?
バイパス回路を利用してUPS本体を切り離せるため、バイパス給電中に旧UPSの
撤去→新UPSの据付→切替えを行います。
ただしバイパス中は無保護状態であることに注意してください。
遠隔監視でUPSの状態を把握できますか?
SNMP通信カードやクラウド監視サービスに対応したUPSなら、
蓄電池残量・負荷率・異常アラームを遠隔で確認できます。
ビル管理システム(BAS)との連携も可能です。
参考規格・出典
- JIS C 4411-3 無停電電源装置(UPS)
- 電気設備技術基準・解釈(経済産業省)