AHU(エアハンドリングユニット)とは?
エアハンドリングユニット

【超解説】とても簡単に言うと何か?

建物の空気を「冷やす・温める・湿度を調整する・きれいにする」といった処理をまとめて行う
大型の空気処理装置です。機械室に設置され、処理した空気をダクトで各部屋に届けます。

【画像配置予定:AHUの内部構造と空気の流れ図解】

1. 基本概要

そもそも何か

AHUとは「AirHandlingUnit」の略称で、日本語では「空気調和機」または
「エアハンドリングユニット」と呼ばれるセントラル空調システムの中核機器です。チラー
ボイラー
から供給される冷水・温水を利用し、空気の温度・湿度・清浄度を総合的に
コントロールします。

ビルマルチエアコン(VRF)が冷媒で直接冷暖房を行うのに対し、AHUは冷温水を熱源として空気を
処理する「水方式」です。
大型ビル、病院、クリーンルーム、美術館など高度な空気質が求められる施設で多く
採用されます。

なぜ必要なのか

ファンコイルユニット(FCU)は各部屋に設置する小型装置ですが、換気や加湿の機能は
限定的です。
AHUは外気の取り入れ、フィルタリング、加湿・除湿を一括で行えるため、建築物衛生法
(ビル管法)で定められた室内環境の基準値を確実に満たすことができます。

特に病院の手術室やクリーンルームではHEPAフィルタによる高度なろ過が必要であり、AHUが
不可欠です。
また外気冷房(フリークーリング)にも対応でき、中間期の省エネに大きく貢献します。

2. 構造や原理

内部構造

AHUは大きな箱型の筐体の中に複数の機能ユニットが直列に配置された構造です。
空気の流れに沿って一般的に以下の順序で構成されます。

  • 外気取入口・混合部:外気と還気(室内からの戻り空気)を混合するセクション。
    外気ダンパーと還気ダンパーで混合比率を調整します。
  • プレフィルタ・中性能フィルタ:空気中のホコリや粉塵を除去します。
    クリーンルーム向けではHEPAフィルタも追加されます。
  • 冷却コイル(冷水コイル):チラーから供給される冷水(7℃程度)が流れる銅管フィンコイルで
    空気を冷却します。
  • 加熱コイル(温水コイル):ボイラーから供給される温水(60℃程度)で空気を加熱します。
  • 加湿器:蒸気式または気化式の加湿器で冬場の乾燥した空気に適切な湿度を付与します。
  • 送風機(ファン):処理した空気をダクトに送り出す大型のシロッコファンまたはプラグファンが
    搭載されています。

作動原理

AHUは外気と還気を混合した後、フィルタで浄化し、コイルで温度を調整し、送風機でダクトに
送り出すというシンプルな原理で動作します。

温度制御は冷温水の流量を二方弁または三方弁で調整し、風量制御は送風機のインバータによる
回転数制御やVAV(可変風量装置)との組み合わせで行います。

外気冷房(フリークーリング)では外気が十分に冷たい中間期に冷水コイルを使わず外気だけで
室温を下げることが可能です。
外気エンタルピーと室内エンタルピーを比較して自動的に切り替えます。

3. 素材・形状・規格

外観形状と素材

AHUは亜鉛めっき鋼板やステンレス鋼板で作られた箱型の筐体で、内面に断熱材が
貼り付けられています。
処理風量に応じてサイズは様々で、大型のものは幅2m以上×奥行5m以上×高さ2m以上に達します。

コイルの素材は銅管にアルミフィンが圧着された構造が標準で、病院や食品工場など衛生要件が
高い施設ではステンレスフィンが使用される場合もあります。

種類や関連規格

AHUは設置形態と機能によって以下のように分類されます。

  • フロア型(据置型):機械室の床に設置する標準型。
    大風量に対応でき、メンテナンス性に優れます。
  • 天井吊型(コンパクト型):天井裏に吊り込む小型タイプ。
    機械室が確保できない場合に使用。
    処理風量は限定的です。
  • 外気処理専用(OA処理AHU):外気の温湿度調整のみを行い、FCUやVAVと組み合わせて使用する
    タイプです。

関連規格はJISB8330(送風機の試験及び検査方法)、JISB9908(換気用エアフィルタ)などが
適用されます。建築物衛生法に基づく維持管理基準への適合も必要です。

4. 主に使用されている場所

使用される施設

  • 大規模オフィスビル:基準階の外気処理用AHUとしてFCUやVAVと組み合わせてセントラル空調を
    構成します。
  • 病院:手術室やICUにはHEPAフィルタ付きの専用AHUが設置され、清浄度クラス1万〜クラス100の
    環境を維持します。
  • クリーンルーム:半導体工場や製薬工場では超高性能フィルタを装備したAHUが生産品質の要と
    なります。
  • 美術館・博物館:温度±1℃、湿度±5%RHの精密な環境制御が求められるため、高精度のAHUが
    採用されます。
  • 劇場・ホール:大空間の一括空調として大風量のAHUが使用されます。

具体的な設置位置

フロア型AHUは地下や各階の機械室に設置されます。
外気取入口はルーバー付きの壁面開口部から取り込み、処理後の空気は給気ダクトで各部屋に
供給されます。

天井吊型は天井裏のスペースに設置されますが、メンテナンス用の点検口を確保する必要が
あります。コイルやフィルタの交換ができる空間の確保が設計上重要です。

5. メリット・デメリット

メリット(長所)

  • 総合的な空気質管理:温度・湿度・清浄度・換気量を一台で統合管理でき、ビル管法の基準を
    確実に満たせます。
  • 大空間の空調に適している:大風量の処理が可能なため、劇場・工場・大型店舗など広い空間の
    空調に最適です。
  • フリークーリングが可能:中間期に外気をそのまま利用して冷房を行うことで、チラーの運転を
    停止でき大幅な省エネになります。
  • 長寿命:冷媒を使わないためフロン漏洩のリスクがなく、適切にメンテナンスすれば20〜25年の
    長期使用が可能です。

デメリット(短所・弱点)

  • 大きなスペースが必要:AHU本体と冷温水配管・ダクトに機械室のスペースが必要です。
    有効面積の減少につながります。
  • 初期費用が高い:AHU本体+チラー+ボイラー+冷温水配管+ダクトというシステム全体の費用が
    大きく、EHPマルチより高額になります。
  • 個別制御には向かない:1台のAHUで1ゾーンを一括空調するため、部屋ごとの個別温度設定には
    FCUやVAVの併用が必要です。
  • ダクト工事のコストと手間:大口径のダクト敷設は天井裏のスペースを圧迫し、施工コストも
    高くなります。

6. コスト・価格の目安

導入や更新にかかる費用

AHUの費用はシステム全体で考える必要があります。
AHU単体の費用に加えて、チラー・ボイラー・配管・ダクトの費用が発生するため、ビルマルチ方
式と比較すると初期投資はかなり高額になります。

おおよその相場(処理風量10,000m³/h級)

  • AHU本体:300万〜600万円程度
  • 関連ダクト工事:200万〜400万円程度
  • 冷温水配管工事:100万〜200万円程度
  • 年間メンテナンス費:10万〜20万円程度

AHU周り合計目安:600万〜1,200万円程度(チラー・ボイラーは別途)

7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法

更新周期(推奨交換時期)

AHUの推奨更新周期は20〜25年が一般的です。
ただし、コイルの腐食による漏水やファンモーターの劣化が先に訪れることがあります。
部品単位の更新(コイル交換、モーター交換)で延命し、筐体の劣化が進んだ時点で全体を
更新するのが一般的です。

絶対にやってはいけない悪い使用方法

【NG事例】フィルタの交換・清掃を長期間怠る

AHUのフィルタが目詰まりすると
風量が激減し、空調能力が低下します。
「風量が足りない」からとファンの
回転数を上げて運転することは、
モーターの過負荷と電力浪費を
招く最悪の対処法です。
フィルタの交換時期を無視し続けると
コイルにもホコリが付着して
熱交換効率がさらに悪化します。

悪い使用方法をするとどうなるか(末路)

フィルタの目詰まりを放置すると圧力損失が増大し、ファンモーターが過負荷で焼損する恐れが
あります。
モーター交換には数十万円の費用と1週間以上の工期が必要で、その間は空調が完全停止します。

さらにコイルにホコリが堆積すると結露水にカビが発生し、その空気が室内に供給されることで
「シックビル症候群」の原因になります。
健康被害が発生した場合、ビルオーナーの管理責任が問われる可能性もあります。

8. 関連機器・材料の紹介

AHUと組み合わせて使用されるセントラル空調システムの関連機器を紹介します。

9. 多角的なQ&A(20連発)

一般人(施設利用者・通行人)目線

AHUと普通のエアコンは何が違いますか?

普通のエアコン(EHP)は冷媒ガスで直接冷暖房しますが、AHUは冷水や温水を使って
空気を処理し、ダクトで各部屋に届けます。
温度だけでなく湿度や空気のきれいさも調整できるのが特徴です。

ビルの機械室からゴーッという音がするのはAHUですか?

大型のファン(送風機)が内蔵されているため運転中は送風音が発生します。
機械室のドアや壁には防音処理が施されていますが、近くを通ると音が聞こえる場合が
あります。

AHUで加湿される空気は衛生的ですか?

蒸気式加湿器を使用する場合は高温の蒸気を利用するため衛生的です。
気化式の場合は定期的な水槽の清掃と給水の水質管理が重要です。
適切に管理されていれば問題ありません。

ビルの天井からの吹き出し口はAHUにつながっていますか?

必ずしもすべてがAHUではなく、ビルマルチの室内機からの吹き出し口の場合もあります。
長いダクトを通って風が出てくるタイプはAHUからの給気である可能性が高いです。

美術館が一年中快適なのはAHUのおかげですか?

はい、美術館では展示品保護のため温度・湿度を厳密に管理する必要があり、高精度の
AHUが中心的な役割を担っています。温度±1℃、湿度±5%RH以内の制御精度が求められます。

職人(施工者・設備工事士など)目線

AHUの搬入はどのように行いますか?

大型AHUは完成品のまま搬入できないことが多いため、分割搬入して現場で組み立てる方
法が一般的です。
搬入経路(ドア幅・通路幅)を事前に確認し、重機(クレーン等)の手配を計画します。

冷温水コイルの配管接続で注意すべき点は?

コイルの接続は必ず「冷水は下入り上出し」(対向流)で接続してください。
逆にすると熱交換効率が大幅に低下し、空気が十分に冷えなくなります。

AHUのドレン配管の施工ポイントは?

冷却コイルの結露水を排出するドレン配管は、必ず排水先まで下り勾配を確保してください。
トラップ(水封)の設置も必須です。
トラップがないとファンの吸引力でドレンが逆流する原因になります。

フィルタ枠のシール処理はなぜ重要ですか?

フィルタ枠と筐体の隙間から未処理の空気が漏れるとフィルタの意味がなくなります。
特にHEPAフィルタを使用するクリーンルーム向けではリーク試験による確認が必須です。

ファンのVベルト調整はどの程度の頻度で行いますか?

初回運転後1ヶ月以内にベルトのたわみを再調整し、その後は半年〜1年ごとに点検・
調整します。最近はVベルト不要のプラグファン(直結駆動)への移行が進んでいます。

施工管理者目線

AHUの風量計算で必要な情報は何ですか?

空調対象面積と天井高、在室人数(換気量算定)、室内発熱量(照明・機器・人体)、
外皮負荷(日射・外気温)が基本的な入力項目です。
これらからピーク負荷を算出し必要風量を決定します。

AHU方式とビルマルチ方式を比較する判断基準は?

湿度制御の要否、換気量の多さ、空気清浄度の要求レベル、機械室スペースの有無が主な
判断基準です。
高度な空気質が必要な場合はAHU、個別制御と省スペースを重視する場合はビルマルチが
適しています。

AHUの機械室に必要なスペースはどの程度ですか?

AHU本体に加えて、フィルタ引き出しスペース、コイル交換スペース、
ダクト接続スペースが必要です。
目安としてAHU本体の2〜3倍の床面積を機械室に確保してください。

外気処理AHUとFCUの組み合わせ設計のポイントは?

外気処理AHUが換気と除湿を担当し、FCUが室内の顕熱処理(温度制御)を担当する分担が
基本です。AHUの給気温湿度を適切に設定することで、FCUの負担を最小限にできます。

省エネ評価でAHUが有利になるのはどんな場合ですか?

外気冷房が活用できる中間期が長い地域や、換気量が多い施設ではAHU方式が
省エネ評価で有利になります。全熱交換器との組み合わせも効果的です。

設備管理者(オーナー・保守担当・維持管理)目線

AHUのフィルタ交換頻度はどの程度ですか?

プレフィルタは1〜3ヶ月ごとに清掃または交換、中性能フィルタは6ヶ月〜1年ごとに
交換が一般的です。差圧計を設置して圧力損失の上昇をモニタリングする方法が確実です。

冷温水コイルの漏水が発見された場合はどうしますか?

コイルの銅管にピンホール(微小な穴)が発生した場合はチューブの栓止め処理で
応急補修が可能です。
ただし栓止めが多くなると能力低下するためコイルごとの交換が必要になります。

Vベルトからプラグファンへの更新は可能ですか?

既存のAHU筐体を活用してファンセクションのみをプラグファン(直結駆動)に更新する
改修工事は可能です。Vベルトの交換作業が不要になり、メンテナンス負担が軽減されます。

加湿器のメンテナンスで特に注意すべき点は?

蒸気式加湿器はスケール(水垢)の堆積に注意し、シーズン終了時にタンクの清掃を
行います。気化式は加湿エレメントの交換と水槽内のレジオネラ菌対策が重要です。

AHUの省エネ運転ですぐにできることは?

外気冷房のエンタルピー制御を適切に設定することが最も効果的です。
また、ナイトパージ(夜間の外気導入による蓄冷)やCO2濃度に基づく外気量制御も
有効な省エネ手法です。