ファスナー(取り付け金物)とは?
カーテンウォールを躯体につなぐ「見えない支え」

【超解説】とても簡単に言うと何か?

ビルの外壁(カーテンウォール)を建物の骨組みに固定するための金属製の取り付け部品です。
地震の時に壁が揺れても壊れないよう「動ける」仕組みになっています。

1. 基本概要

そもそも何か

ファスナーは、カーテンウォール(非耐力壁)を建物の鉄骨や鉄筋コンクリート
躯体に取り付けるための金物(ブラケット)の総称
です。風圧力・自重・地震力を
カーテンウォールから躯体に伝達する重要な接合部品です。

なぜ必要なのか

カーテンウォールは自重を支える構造ではなく、躯体に「掛ける」または「吊る」構造です。
ファスナーは荷重を確実に伝えつつ、躯体の変形(層間変位)に追従できる機構が必要です。

2. 構造や原理

固定支持ファスナー

カーテンウォールの自重と風圧力の両方を支持する「親ファスナー」。
通常は各階の上部に設置し、カーテンウォールを吊り下げます。

スライド支持ファスナー

風圧力のみを支持し、自重方向にはスライドする「子ファスナー」。ルーズホール(長穴)により
層間変位や熱伸縮を吸収します。

ロッキング機構

地震時の層間変位(±25〜±50mm)に対してカーテンウォールが回転(ロッキング)して
追従する仕組み。ファスナーのピン接合部が回転を許容します。

3. 素材・形状・規格

材質:スチール(SS400・SM490)に溶融亜鉛めっき、またはSUS304。アルミカーテンウォール用は
アルミダイキャスト(ADC12)も使用。
形状:L字型・T字型・コの字型など多様。
アンカーボルトで躯体に固定。JASS 14(カーテンウォール工事)に施工基準があります。

4. 主に使用されている場所

高層オフィスビルの外壁、商業施設のガラスファサード、ホテルの外装パネル、
公共建築の石・タイルパネル、工場のALC外壁パネルの取り付け部など。

5. メリット・デメリット

メリット

① 変位追従:層間変位・温度変位を吸収してカーテンウォールを保護。
② 施工調整:3次元の
位置調整機構で精度を確保。
③ 交換可能:パネル交換時にファスナーごと交換可能。

デメリット

① コスト:特注品が多く汎用品より高価。
② 設計負荷:風圧力・地震力の
計算が必要で設計が複雑。
③ 精度要求:施工精度が外壁の仕上がりを左右します。

6. コスト・価格の目安

おおよその相場

  • スチール製ファスナー(1個):
    5,000円〜20,000円程度
  • ステンレス製ファスナー:
    1万〜5万円程度
  • アルミダイキャスト製:
    3,000円〜15,000円程度
  • 取付工事費:
    3,000円〜8,000円/個程度

7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法

更新周期

溶融亜鉛めっき鋼製は30〜50年程度の耐用年数。ステンレス製はそれ以上。
大規模修繕時にカーテンウォールパネル交換と合わせて点検・交換。

絶対にやってはいけない悪い使用方法

【NG事例】スライドファスナーのボルトを本締めする

スライド支持のルーズホールは
変位を吸収するための「遊び」です。
ボルトを本締めして
スライドを固定してしまうと、
地震時にカーテンウォールが
変位を吸収できず
ガラスが割れたりパネルが
脱落する重大事故につながります。

8. 関連機器・材料の紹介

9. 多角的なQ&A(20連発)

一般人(建物利用者等)目線

ビルの外壁は落ちない?

ファスナーで躯体にしっかり固定されています。設計上の安全率は十分に確保され
定期点検も行われています。

地震で外壁が割れるのはなぜ?

ファスナーの変位吸収量を超える層間変位が発生した場合や、
施工不良で可動部が固定されていた場合に破損することがあります。

外壁の点検は行われている?

建築基準法の定期報告制度で特定建築物は外壁の打診調査等が義務付けられています。

外壁パネルの交換はできる?

ファスナーはパネルごとの着脱が可能な設計になっているため損傷したパネルだけを
交換できます。

風で外壁が揺れることは?

強風時にわずかに動くことは正常な挙動です。ファスナーが風圧力を吸収しているためです。

職人(現場施工者等)目線

ファスナーの取付精度は?

前後・左右・上下の各方向で±3mm以内が一般的な許容誤差。ライナープレートで
微調整を行います。

先付けと後付けの違いは?

先付け:コンクリート打設前にアンカーを設置。精度が高い。
後付け:あと施工アンカーで
固定。施工の自由度が高い。

溶接は必要?

鉄骨躯体への取付は溶接が必要な場合があります。開先溶接やすみ肉溶接で
所定の強度を確保してください。

防錆処理は?

溶接部や切断面は高濃度亜鉛末塗料でタッチアップ補修してください。
めっきが剥がれた部分は腐食の起点になります。

ルーズホールの向きは?

自重方向(鉛直方向)にスライドする長穴を設けます。図面で指定された向きを
必ず確認してください。

施工管理者(現場監督)目線

構造計算のポイントは?

①風圧力(正圧・負圧)、②自重、③地震力(層間変位)の3つの荷重に対して
ファスナーの耐力を確認します。

躯体精度との関係は?

RC躯体の施工誤差が大きいとファスナーの調整代を超えてカーテンウォールが納まりません。
躯体の出来形管理が重要です。

異種金属の接触腐食は?

アルミ部材とスチールファスナーの接触部に絶縁処理が必要です。絶縁テープやブチルゴム
パッキンを挟んでください。

品質検査は?

工場製作時の溶接検査(UT・VT)、寸法検査、めっき膜厚検査を確認。
現場取付後は位置・レベルを測量。

モックアップ試験は?

大型プロジェクトでは実寸大のカーテンウォールを製作して風圧・水密・
層間変位の試験を行います。

設備管理者(保守点検者)目線

点検方法は?

ゴンドラやロープアクセスで外壁面から目視確認します。ボルトの緩み・腐食・
シーリングの劣化を確認。

地震後の点検は?

震度5弱以上の地震後は全数点検を推奨します。パネルのずれ・ガラスの割れ・
シーリングの切れを確認。

腐食が見つかった場合は?

赤錆が発生している場合は専門業者に強度調査を依頼し、必要に応じて補強または
交換してください。

ボルトの緩みは?

トルクレンチで定期的に締付トルクを確認してください。ただしスライド部の
ルーズボルトは本締め禁止です。

修繕計画のポイントは?

建物のライフサイクルで30年目にカーテンウォール全面改修、15年目に中間点検と
シーリング打替えが目安です。