DS(ダクトスペース)とは?
空気の高速道路 ─ 空調ダクトが階を貫く「見えない縦穴」

【超解説】とても簡単に言うと何か?

ビルの中を上下に貫く
「空調ダクト専用の縦穴」です。
EPS(電気)やPS(配管)と同じく
建物のコア部分に設けられ
冷暖房の空気や排煙ダクトが
この穴を通って各階に
空気を届けたり排出したりします。

1. 基本概要

そもそも何か

DS(Duct Space)は、空調ダクト・排煙ダクト・換気ダクト等を縦方向に通すための専用シャフトです。
各階の床スラブを貫通し、屋上の空調機械室から地下まで、あるいは各階の空調機から天井裏に至るダクトのルートを確保します。

なぜ必要なのか

空調ダクトは配管と違い断面積が非常に大きく(300×300mm〜1,500×1,500mm)、PS(パイプシャフト)には収まりません。
専用のダクトスペースを設けなければ、大型ダクトを各階に通すことができません。
排煙ダクトは防火区画を貫通するため、法令上も専用シャフトでの貫通処理が求められます。

2. 構造や原理

構造

床スラブを四角く開口し
その周囲を耐火壁(1時間耐火)で
囲んだ竪穴です。
各階にはダクト接続のための
開口部(スリーブ)が設けられ
防火ダンパー(FD)で
延焼防止を行います。

ダクトの種類

給気ダクト(SA):空調機から各室に冷暖房の空気を送る。
還気ダクト(RA):各室の空気を空調機に戻す。
外気ダクト(OA):外気を空調機に取り入れる。
排気ダクト(EA):室内の空気を外部に排出する。
排煙ダクト(SE):火災時の煙を外部に排出する。

3. 素材・形状・規格

シャフト壁:耐火構造(耐火1時間以上)のRC壁またはALC壁。
開口寸法:ダクトサイズ+メンテナンススペース(片側100mm以上)。
典型的なDS寸法:1,000×1,000mm〜2,000×2,000mm。
防火区画貫通部:防火ダンパー(FD)必須(建築基準法施行令第112条)。
排煙ダクト:不燃材料、1.5mm以上の鋼板(建築基準法施行令第126条の3)。
点検口:各階に設置(ダクト接続部・FDの点検用)。

4. 主に使用されている場所

オフィスビルのコア部分、
商業施設の空調系統、
病院の空調・排煙系統、
ホテルの客室系統ダクト、
大型マンションの排気系統、
工場の局所排気システム。

5. メリット・デメリット

メリット(長所)

大容量の気流搬送:配管では不可能な大量の空気を各階に搬送できます。
防火区画の確保:専用シャフトにFDを設けることで確実な防火区画が形成されます。
メンテナンス性:点検口からダクト・FDの点検・清掃が容易にできます。

デメリット(短所・弱点)

大きな面積を占有:ダクトの断面積が大きいため、EPSやPSに比べて広いスペースが必要です。
騒音伝搬:シャフトを通じて上下階間で騒音が伝わりやすいため、消音対策が必要です。
煙突効果:高層ビルでは上昇気流(煙突効果)が発生し、火災時の煙拡散の原因になります。

6. コスト・価格の目安

おおよその相場

  • DSシャフト壁(RC造、1階分): 20万〜50万円程度
  • 防火ダンパー(FD、1台): 3万〜10万円程度
  • 点検口(1ヶ所): 1万〜3万円程度
  • ダクト貫通部の耐火処理: 5万〜15万円/箇所程度

7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法

更新周期(推奨交換時期)

シャフト壁は建物寿命(50〜60年)と同じ。
防火ダンパーは15〜20年で交換。
ダクト本体は20〜30年で更新。

絶対にやってはいけない悪い使用方法

【NG事例】DS内に配管や電線を無断で追加する

ダクトスペースにダクト以外の
配管や電気ケーブルを
無断で通すと
防火区画の耐火性能が損なわれ
建築基準法違反になります。
追加設備の設置は
必ず設計者に確認してください。

悪い使用方法をするとどうなるか(末路)

防火区画が破壊されたDSから火災の煙が全階に拡散し、被害が建物全体に及びます。
消防検査で違反が発覚すると使用停止命令が出され、是正工事に数百万円の費用がかかります。

8. 関連機器・材料の紹介

9. 多角的なQ&A(20連発)

一般人目線

DSって何の略?

Duct Space(ダクトスペース)の略です。
空調の空気を通すダクト専用の竪穴(シャフト)です。

PSやEPSとの違いは?

PSは配管用、EPSは電気配線用、DSはダクト用のシャフトです。
それぞれ中を通るものが異なりますが、建物のコア部分に並んで設置されます。

マンションにもある?

中央空調方式のマンションにはありますが、個別エアコン方式のマンションにはありません。
キッチン・浴室の排気用に小規模なDSが設けられることはあります。

DSから音がするのはなぜ?

ダクト内を流れる空気の風切り音や、ファンの振動が伝わっています。
消音ボックスや防振材で対策することができます。

DSは見ることができる?

通常は壁の中に隠れていて見ることはできません。
点検口が廊下やトイレの天井にある場合がありますが、管理者以外は開けないでください。

職人(設備工事者)目線

DS内でのダクト接続は?

竪ダクトから横引きダクトを分岐する場合、十分な作業スペースが必要です。
DS内での溶接は火災リスクがあるため、フランジ接続を推奨します。

FDの設置位置は?

防火区画(床スラブ)の貫通部から1m以内にFDを設置してください。
FDの点検口は必ず操作・確認可能な位置に設けてください。

貫通部の埋め戻しは?

スラブ貫通部のダクトと躯体の隙間はロックウール+耐火パテで完全に塞いでください。
隙間があると防火区画として認められません。

DS内の支持は?

竪ダクトは各階の床スラブで支持します。
振れ止めも設置し、地震時のダクトの脱落を防止してください。

作業時の安全対策は?

DS内は狭くて暗い空間です。必ず照明を確保し、墜落防止のために開口部に仮設手すりを設けてください。

施工管理者(現場監督)目線

DSの大きさの決め方は?

通過するダクトの断面積+メンテナンススペース(片側100mm以上)で決まります。
将来の増設余裕も考慮して20〜30%の余裕を見てください。

構造体との調整は?

DS開口は構造体(梁・柱)を避けて配置します。
構造設計者と早期に協議し、スラブ補強(開口補強筋)を計画してください。

他設備との離隔は?

DSはEPS・PSと隣接することが多いですが、耐火壁で区画してください。
配管とダクトを同一シャフトに通す場合は保温・結露対策が必要です。

排煙ダクトのDS要件は?

排煙用DSは専用シャフトとし、他の空調ダクトと兼用しないでください。
排煙ダクト本体も1.5mm以上の鋼板で、隙間なく施工してください。

BIMでの確認事項は?

3Dモデルでダクトルート・DS寸法・FD位置・他設備との干渉を確認してください。
施工前にDSの内部空間が十分かをシミュレーションで検証します。

設備管理者(ビル管理者)目線

FDの定期点検は?

年1回以上、FDの閉鎖動作確認と復帰操作の点検を実施してください。
建築基準法第12条の定期報告で検査対象になります。

DS内のダクト清掃は?

3〜5年ごとにダクト内部の清掃を推奨します。
ホコリや油脂の蓄積は空気質の悪化と火災リスクの原因になります。

煙突効果の対策は?

高層ビルではDS内に気流が発生し、上階への騒音伝搬や熱損失が起きます。
各階のFDを適切に管理し、不要な気流を遮断してください。

DS内の漏水対策は?

DSに配管が通っている場合は漏水がダクトにかかる可能性があります。
漏水検知センサーの設置と定期巡回で早期発見してください。

DSの改修工事は大変?

はい。狭いシャフト内での作業は困難で、ダクトの搬入・搬出も制約があります。
改修計画は設計段階で搬入経路・作業スペースを十分に検討してください。