フロアヒンジとは?
ガラスドアを支える「床の中の回転装置」

【超解説】とても簡単に言うと何か?

お店やビルの入口にあるガラスのドアがくるっと回るのは、床の中に埋まっている
回転する装置のおかげです。それがフロアヒンジです。

1. 基本概要

そもそも何か

フロアヒンジとは、ドアの回転軸を床面に埋め込んで支持する油圧式の閉扉装置です。
ドアクローザーと同じく、ドアを開けた後に自動でゆっくり閉めてくれる機能があります。
ドアの上部に金物が露出しないため、ガラスドアのような美しい意匠性を
保ちたい場所で多用されます。ニュースター(日本ドアーチエック)や
ドルマ(DORMA)が主要メーカーです。

なぜ必要なのか

ガラスドアや大型の重量ドアでは、通常の丁番やドアクローザーでは
ドアの荷重を支えきれなかったり、意匠上の問題が生じたりします。
フロアヒンジは床にドアの全荷重を預けるため、重いドアでも安定して
開閉でき、しかも上部に金物が見えないスッキリした外観を実現できます。

2. 構造や原理

内部構造

本体は金属製のケースに収められ、コンクリート床の中に埋設されます。
内部構造はドアクローザーと基本的に同じで、コイルバネ:閉扉方向の力を発生、
油圧シリンダー:閉扉速度を制御、速度調整弁:スピードを微調整、
回転軸(ピボット):ドアを支持。上部にはフロアプレート(化粧蓋)が
かぶせられ、床面と一体化します。

作動原理

ドアを開くと、ドア下端のピボットが本体内部の回転軸に接続されているため、
バネが蓄力されます。手を離すとバネの力でドアが閉まり方向に
動きますが、油圧ダンパーが抵抗をかけてゆっくりと閉まります。
ドアクローザーとの最大の違いは、回転軸自体がドアを下から支持している点です。
そのためドアの全荷重がフロアヒンジにかかります。

3. 素材・形状・規格

外観形状と素材

本体ケースは鋳鉄またはアルミダイカスト製で、フロアプレート(床面の蓋)はステンレス製が
一般的です。サイズは製品によって異なりますが、床への埋め込み深さは約50〜80mm、
幅は約120〜180mmが標準的です。フロアプレートは仕上げ床材に合わせて
ステンレスヘアライン仕上げやブロンズ仕上げなどが選べます。

種類や関連規格

中心吊り型:ドアの吊り元が枠の中心に来るタイプ。内外どちらにも開く両開きが可能です。
持出吊り型(偏心型):ドアの吊り元を枠の外側にオフセットさせるタイプ。
片開きの一般的なドアに使用されます。
ストップ付き:任意の角度で
ドアを固定できるタイプです。対応するドアの重量によって
「S(軽量)」「M(中量)」「H(重量)」の区分があり、ガラスドア用は80〜120kgに
対応する製品が主流です。

4. 主に使用されている場所

使用される施設

商業施設、オフィスビル、ホテル、美術館、公共施設のエントランスなど、
ガラスドアが設置される場所で最も多く使用されます。コンビニエンスストアやカフェの入口も
フロアヒンジが使われている典型的な場所です。住宅では玄関のガラスドアや
リビングへの大開口ドアに採用されることがあります。

具体的な設置位置

ドアの吊り元側の床面に埋設されます。コンクリート床の場合は施工段階で
ボックスを埋め込み、仕上げ時にフロアプレートを取り付けます。ドアの上部には上部ピボット
(トップピボット)が取り付けられ、上下2点でドアを支持します。

5. メリット・デメリット

メリット(長所)

① 優れた意匠性:ドア上部にクローザー等の金物が見えないため、
ガラスドアの美しさを最大限に活かせます。
② 重量ドアに対応:床でドアの
全荷重を受けるため、100kgを超えるドアでも安定して支持できます。
③ 閉扉速度の調整が可能
ドアクローザーと同様に、スピード調整で安全な閉扉速度を設定できます。

デメリット(短所・弱点)

① 油漏れのリスク:床面から油が漏れると床が汚れ、滑って転倒する危険があります。
② 交換工事が大がかり:床に埋設されているため、交換時には
床の一部を解体する必要があります。
③ 水の浸入リスク:外部出入口に設置した場合、雨水が
フロアプレートの隙間から侵入し、本体の腐食を早めることがあります。

6. コスト・価格の目安

導入や更新にかかる費用

フロアヒンジは製品本体が高価で、交換工事も床の解体・復旧を伴うため
トータルコストは比較的高めです。

おおよその相場(機器+工事の場合)

  • 本体(中心吊り・標準型):
    30,000円〜60,000円程度
  • 本体(持出吊り・重量型):
    50,000円〜100,000円程度
  • フロアプレート:
    5,000円〜15,000円程度
  • 新設工事費(床埋設込み):
    20,000円〜50,000円程度
  • 交換工事費(床復旧含む):
    30,000円〜80,000円程度

合計目安: 55,000円〜180,000円程度

7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法

更新周期(推奨交換時期)

フロアヒンジの耐用年数は約10〜15年が目安です。コンビニや商業施設のように1日に
数百〜数千回開閉される場所では7〜10年程度で油漏れが発生するケースもあります。
油漏れを発見したら速やかに交換が必要で、修理は基本的にできません。

絶対にやってはいけない悪い使用方法

【NG事例】ドアを強風で煽られる状態での放置

外部出入口のフロアヒンジドアを
ストッパーなしで使用すると、
強風でドアが激しく煽られ、
内部のバネやギアに過大な負荷が
かかり、早期に故障します。
また、水たまりができるような場所では
水がフロアプレートの隙間から侵入し
本体が腐食するため、排水対策が必要です。

悪い使用方法をするとどうなるか(末路)

油漏れを放置すると、ドアの閉扉速度が制御不能になり「バタン」と閉まるか、
逆に閉まらなくなります。漏れた油で床が滑りやすくなり、転倒事故のリスクが高まります。
さらに、フロアヒンジの軸が摩耗するとドア全体が傾き、ガラスドアの場合は
ガラスが枠に干渉して割れる危険性もあります。

8. 関連機器・材料の紹介

フロアヒンジと合わせて使用される建具金物をご紹介します。

9. 多角的なQ&A(20連発)

一般人(施設利用者・通行人)目線

コンビニの入口ドアが勝手に閉まるのはフロアヒンジのおかげですか?

はい、その通りです。コンビニやカフェのガラスドアの多くは
床に埋め込まれたフロアヒンジで支えられており、油圧の力で
ゆっくりと自動的に閉まります。

ドアの足元から油がにじんでいるのは何ですか?

フロアヒンジ内部の作動油が漏れている状態です。油漏れが発生すると閉扉速度の制御が
効かなくなるため、早急にビル管理会社に連絡してください。
滑って転倒する危険もあります。

ガラスドアが重くて開けにくい時はフロアヒンジが原因ですか?

フロアヒンジの速度調整が強すぎるか、内部の油が硬化している可能性があります。
特に冬場は油の粘度が上がるためドアが重く感じることがあります。
管理会社に調整を依頼してください。

ドアが「バタン」と勢いよく閉まって危ないのですが。

フロアヒンジの油漏れか、速度調整弁の故障が考えられます。特にお子さんやお年寄りには
危険な状態ですので、建物の管理者にすぐに報告してください。

フロアヒンジとドアクローザーの違いは何ですか?

どちらもドアを自動で閉める装置ですが、フロアヒンジは床に埋め込まれ
ドアの全荷重を支えます。ドアクローザーはドア上部に取り付け、閉扉のみを制御します。
ガラスドアではフロアヒンジが一般的です。

職人(現場施工者等)目線

フロアヒンジの埋設精度はどの程度必要ですか?

水平精度は±1mm以内が求められます。本体が傾いているとドアが自然に
開く方向に流れてしまい、閉扉不良の原因になります。施工時はレベル(水準器)で
必ず水平を確認してください。

コンクリート打設時の埋設方法は?

床コンクリート打設前にフロアヒンジのボックス(ケース)を鉄筋に溶接して
固定し、天端を仕上がり床面に合わせます。コンクリートがボックス内に入らないよう
養生テープでしっかりと覆ってください。

交換工事での注意点は?

既存のフロアヒンジを撤去する際、周囲の床仕上げ材(石材やタイル)を
損傷しないよう慎重に作業してください。同一メーカー・同一品番への交換が
最もスムーズです。異なるメーカーの場合はボックスサイズが
異なることがあるため、事前確認が必須です。

上部ピボット(トップピボット)の施工で注意することは?

フロアヒンジの回転軸と上部ピボットの軸心が一致していないとドアが正しく回転しません。
上下の軸心を結ぶ線が垂直になるよう下げ振りなどで確認しながら取り付けてください。

速度調整はどうやって行いますか?

フロアプレートを外し、本体上面にある速度調整弁をマイナスドライバーで
回して調整します。ドアクローザーと同じく、半回転以内での微調整を心がけ、
回しすぎによる油の噴出に注意してください。

施工管理者(現場監督)目線

フロアヒンジの選定基準は?

最も重要なのはドアの重量です。強化ガラスドア(1枚約60〜80kg)には
対応荷重80〜120kgのモデルを選びます。外部出入口では風圧の影響を考慮して
1ランク上のモデルを選定するのが安全です。

防火戸にフロアヒンジは使えますか?

はい、防火認定を受けたフロアヒンジ付き建具であれば使用可能です。
ただし、防火戸としての認定は建具全体(ドア+枠+金物のセット)で
取得するため、フロアヒンジだけを別メーカーに変更することはできません。

施工検査でのチェックポイントは?

①閉扉速度が適正か(全閉まで3〜5秒が目安)、②ラッチングが確実にかかるか、
③フロアプレートのがたつきがないか、④ドアと枠の隙間が均等か、
⑤油漏れがないかの5項目を確認します。

中心吊り型と持出吊り型の選定基準は?

中心吊り型は両方向に開くドアに使用し、飲食店の厨房出入口などに適しています。
持出吊り型は片開きのドアに使用し、一般的なエントランスドアではこちらが主流です。
建築図面の建具表で確認してください。

躯体工事の段階で何を準備すべきですか?

フロアヒンジのボックスをコンクリート打設前に墨出し・固定する
必要があるため、建具メーカーとの打合せを早めに行ってください。
ボックスの設置忘れは後からはつり工事が必要になり、コストと工期に大きく影響します。

設備管理者(オーナー・保守点検者)目線

油漏れの早期発見方法は?

フロアプレート周辺の床面に黒ずんだシミがないか、定期的に目視で確認してください。
また、ドアの閉まる速度が急に変わった(速くなった・遅くなった)場合も
油漏れのサインです。

定期点検はどのくらいの頻度で行うべき?

年に2回(春・秋)の点検が理想的です。フロアプレートを外して内部の
油漏れ・錆・異物の有無を確認し、閉扉速度の調整を行います。開閉回数が多い商業施設では
年4回(四半期ごと)がおすすめです。

フロアヒンジの交換時期の判断は?

油漏れが発生した時点で交換時期です。修理はできないため本体ごとの交換が必要です。
油漏れがなくても設置から15年を超えたら予防的な交換を検討してください。

交換工事中はドアが使えなくなりますか?

はい、交換工事中(通常1〜2日)はドアが使用できなくなります。
商業施設の場合は営業時間外(夜間や定休日)に工事を計画し、
代替の出入口を確保してください。

外部出入口のフロアヒンジで水対策は何をすべき?

フロアプレートの周囲にシーリング材を充填して水の侵入を防ぎます。
ただし完全な防水は困難なため、ドア周辺の排水計画を適切に行い、水たまりができないよう
勾配を確保してください。