PAC(パッケージエアコン)とは?
店舗やオフィスで最も普及しているパッケージ型エアコン
【超解説】とても簡単に言うと何か?
お店やオフィスの天井に埋め込まれている大きなエアコンのこと。
家庭用エアコンを大きく・強力にした「業務用のエアコン」で、室外機1台と室内機1台がセットに
なった最もシンプルな業務用空調機器です。
1. 基本概要
そもそも何か
PAC(PackageAirConditioner)とは、圧縮機・凝縮器・蒸発器・膨張弁などの冷凍サイクルの
構成要素を一つのシステムにまとめた(パッケージ化した)空調機器の総称です。
室外機1台に対して室内機1台を冷媒配管で接続する「ペア型」が基本構成であり、これが
ビルマルチエアコンとの最大の違いです。
なぜ必要なのか
商業施設・オフィスビル・工場などの業務用建物では、家庭用エアコンでは能力が不足する広い
空間を冷暖房する必要があります。
PACは家庭用と比べて冷暖房能力が大きく(2.5〜28kW程度)、長時間の連続運転にも耐える堅牢な
設計がされています。
個別空調・個別管理が可能なため、テナントビルのような個別課金が必要な建物にも
適しています。
2. 構造や原理
冷凍サイクルの構造
PACの冷暖房はヒートポンプ式の冷凍サイクルで動作します。
以下の4つの主要機器で構成されます。
-
圧縮機(コンプレッサー):冷媒ガスを圧縮して高温・高圧にする心臓部。
室外機に内蔵されます。 - 凝縮器(室外機側熱交換器):冷房時は室外に熱を放出し、暖房時は室外から熱を吸収します。
- 膨張弁:高圧の液冷媒を減圧し、低温・低圧の状態にします。
- 蒸発器(室内機側熱交換器):冷房時は室内の熱を吸収し、暖房時は室内に熱を放出します。
冷暖房の原理
冷房時は冷媒が室内機で蒸発する際に室内の熱を奪い、その熱を室外機で外気に放出します。
暖房時は四方弁で冷媒の流れを逆転させ、室外の熱を集めて室内に放出します。
最新のPACはインバーター制御により圧縮機の回転数を細かく調整し、負荷に応じた効率的な
運転を行います。これにより部分負荷時のエネルギー効率が大幅に向上しています。
3. 素材・形状・規格
外観形状と素材
室内機は設置場所に応じて様々な形状があります。
-
天井カセット型(4方向):天井に埋め込まれ、4方向に均等に送風するタイプ。
オフィスで最も多く採用されます。 -
天井吊り型:天井から吊り下げて露出設置するタイプ。
天井裏にスペースがない場所で使用されます。 -
壁掛け型:家庭用に近い形状で壁面に設置。
小規模な事務室や応接室に使用されます。 -
床置き型:床に設置するタイプ。
工場や倉庫など天井が高い空間で使用されます。 - 天井埋込みダクト型:天井内にすべて隠蔽し、ダクトで吹出口まで送風する意匠性の高いタイプ。
種類や関連規格
PACの性能はJISB8616「パッケージエアコンディショナ」で規定されています。
省エネ性能はAPF(通年エネルギー消費効率)で評価され、数値が大きいほど省エネ性能が高い
ことを示します。
冷媒は現在R410AまたはR32が主流です。
R32のほうが地球温暖化係数(GWP)が低く、環境負荷が小さい冷媒として急速に普及が
進んでいます。
4. 主に使用されている場所
使用される施設
PACは以下のような施設で広く使用されています。
- 小〜中規模のオフィスビル
- 小売店舗・飲食店
- クリニック・歯科医院
- 学習塾・美容室などのテナント
- 工場の事務所棟・休憩室
- 倉庫・作業場
具体的な設置位置
室外機は建物の屋上、バルコニー、地上の機械置場などに設置されます。
室内機は天井裏(カセット型)や壁面(壁掛け型)に設置され、冷媒配管と電源線で室外機と
接続します。
室外機と室内機の距離(配管長)には制限があり、一般的に最大50〜70m程度(高低差は
最大30m程度)です。これを超える場合はビルマルチ方式を検討する必要があります。
5. メリット・デメリット
メリット(長所)
- 個別制御が可能:部屋ごとに温度設定・運転切替ができ、使わない部屋は停止できます。
- 故障時の影響範囲が小さい:1台が故障しても他の部屋の空調には影響しません。
- 導入コストが比較的安い:ビルマルチや中央方式に比べて機器費・施工費ともに安価です。
- 施工が容易:1対1の接続のため配管設計がシンプルで工期が短く済みます。
- 更新が容易:1台ずつ独立しているため、部分的な更新がしやすいです。
デメリット(短所・弱点)
-
室外機の台数が多くなる:室内機1台につき室外機1台が必要なため、部屋数が多いと屋上や外壁に
大量の室外機が並びます。 -
集中管理が難しい:各機器が独立しているため、ビル全体の一括制御には別途集中管理システムが
必要です。 -
大規模建物には不向き:室外機設置スペースの制約から、大規模ビルではビルマルチ方式のほうが
合理的な場合があります。
6. コスト・価格の目安
導入や更新にかかる費用
PACの価格は冷暖房能力や室内機の形状によって大きく異なります。
以下は天井カセット型4方向の場合の一般的な目安です。
おおよその相場(機器+工事の場合)
-
機器本体(5.6kW級/天カセ4方向):約15〜30万円(定価ベースは高いが流通価格は大幅に
割引される) - 設置工事費:約10〜20万円(配管長や設置難度による)
合計目安:1セットあたり約25〜50万円程度
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期(推奨交換時期)
PACの法定耐用年数は13〜15年です。
実際の使用年数は設置環境やメンテナンス状況によりますが、一般的に15年前後での更新が
推奨されます。部品の供給が製造終了後10年程度で終了することも更新の目安になります。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
室内機のフィルターを長期間
清掃せずに埃まみれのまま
運転し続けること。
これは能力低下・故障・電気代増加の
最大の原因です。
室外機の吹出口や吸込口の前に
物を置いたり、カバーで密閉すること。
放熱ができなくなり、
圧縮機に過大な負荷がかかります。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
フィルターが目詰まりすると風量が低下し、室内機の熱交換器が凍結する「氷結運転」に
なることがあります。
圧縮機に液冷媒が戻る「液バック」が発生し、圧縮機が破損して修理不能になる場合があります。
室外機の周囲を塞ぐと放熱不足で高圧カットが頻繁に発生し、真夏の最も暑い時間帯に空調が
停まるという最悪の事態を招きます。
圧縮機の焼損に至ると機器ごとの交換が必要になり、数十万円の出費となります。
8. 関連機器・材料の紹介
PACと比較検討されることの多い関連機器を紹介します。
-
ビルマルチエアコン(VRF):室外機1台に対して複数台の室内機を接続できる方式。
室外機の設置台数を減らせるため大規模建物に適しています。
▶ 詳細記事はこちら -
GHP(ガスヒートポンプ):圧縮機をガスエンジンで駆動する方式。
電力消費を大幅に抑えられるため、デマンド対策として採用されます。
▶ 詳細記事はこちら -
全熱交換器:換気の際に排気の熱エネルギーを回収して給気に移す省エネ機器。
PACと組み合わせて使用されます。▶詳細記事はこちら
9. 多角的なQ&A(20連発)
業務用エアコンと家庭用エアコンは何が違うのですか?
最大の違いは冷暖房能力の大きさです。
業務用は広い空間に対応するため能力が大きく、長時間連続運転にも耐える設計に
なっています。
天井のエアコンから水が垂れてくるのはなぜですか?
ドレン配管の詰まりが最も多い原因です。
結露水を排出するドレンパンやホースに汚れが溜まると水が溢れ出します。
定期的な清掃で予防できます。
オフィスのエアコンが寒すぎる場合どうすればよいですか?
風向きルーバーの調整や、自分の席が吹出口の真下にならないようデスク配置を変える方
法があります。管理者に温度設定の見直しを相談してみてください。
エアコンから嫌な臭いがするのはなぜですか?
フィルターや熱交換器に付着したカビや雑菌が主な原因です。
フィルター清掃と専門業者による熱交換器洗浄で改善できます。
屋上にたくさん並んでいる大きな箱は何ですか?
エアコンの室外機です。
各部屋のエアコンに対して1台ずつ設置されており、室内の熱を外に放出する役割を
担っています。
冷媒配管のろう付け作業で特に注意すべき点は?
配管内部に窒素ガスを封入しながらろう付けを行います(窒素ブロー)。
これを怠ると配管内部に酸化スケールが発生し、膨張弁の詰まりの原因です。
真空引きにはどれくらいの時間をかけるべきですか?
配管長にもよりますが、最低でも15〜20分以上の真空引きが必要です。
ゲージが-0.1MPaに達した後も保持して漏れがないか確認します。
ドレン配管の勾配はどの程度確保すべきですか?
原則として1/100以上の下り勾配を確保します。
逆勾配になると水が流れずにドレンパンから溢れ、天井への漏水事故につながります。
天井カセット型の据付で吊りボルトは何本必要ですか?
通常4本の吊りボルト(M10程度)で支持します。
天井スラブのインサートアンカーに確実に固定し、水平を確認してください。
室外機の基礎はどうすべきですか?
屋上設置の場合はコンクリート基礎台またはH鋼架台を設置します。
防振ゴムパッドで振動を吸収し、アンカーボルトで確実に固定します。
PACとビルマルチの選定基準はありますか?
室外機設置スペースに余裕があり部屋数が少ない(10室以下程度)場合はPACが有利です。
それ以上の規模ではビルマルチのほうが合理的です。
冷媒配管の気密試験の基準を教えてください。
窒素ガスで設計圧力(一般的に4.15MPa)まで加圧し、24時間保持して圧力降下がない
ことを確認します。メーカー指定の試験圧力に従ってください。
電気容量の確保で注意すべきことは?
PACは起動時に定格電流の数倍の突入電流が流れます。MCCBの容量選定や電源回路の
太さに注意が必要です。
搬入経路の確認事項は?
天井カセット型の室内機は幅が900mm前後あるため、搬入口・エレベーター・廊下幅を
事前に確認してください。屋上の室外機はクレーン揚重が必要です。
試運転時のチェック項目は?
冷暖房能力(吹出温度)・ドレン排水・異常振動の有無・リモコン操作の
応答・エラーコードの確認が基本項目です。運転電流値の記録も忘れずに行います。
PACの定期点検では何を確認すべきですか?
フィルター清掃(月1回推奨)と、年1〜2回の本格点検を行います。
本格点検では運転電流・冷媒圧力・ドレン排水・異音の有無を確認します。
更新時に同じメーカーでないといけませんか?
PACは独立した1対1のシステムなので、更新時にメーカーを変更しても問題ありません。
ただし冷媒配管の再利用可否はメーカー確認が必要です。
冷媒R22の機器がまだ稼働していますが問題はありますか?
R22はオゾン層破壊物質として2020年に生産が全廃されました。
補充用冷媒の入手が困難になるため、早期のR32機器への更新を推奨します。
テナントごとの電気代を分けるにはどうすればよいですか?
PACは個別の電源回路で運転するため、テナント区画ごとにメーターを設置すれば
電気代の按分が可能です。これがPACの大きな利点の一つです。
15年超のPACを使い続けるリスクは何ですか?
冷媒漏れ・圧縮機故障のリスクが高まり、修理部品の在庫がなくなります。
最新機種は省エネ性能が大幅に向上しており、電気代削減で投資回収が早まる場合も
あります。