中水道(排水再利用設備)とは?
雨水や手洗い水を浄化し、トイレ洗浄水等に再利用する中水設備
【超解説】とても簡単に言うと何か?
手洗いや洗面、浴室で使った水(雑排水)や屋根に降った雨水を集めてきれいにし、トイレの
洗浄水や植栽の散水としてもう一度使う仕組みです。
飲み水(上水)と下水道に流す水(下水)の間にあるから「中水」と呼ばれます。
水道料金と下水道料金の節約になります。
1. 基本概要
そもそも何か
中水道とは、建物で使用した排水や雨水を処理して、飲料水以外の用途に再利用するための
設備システムです。
「上水」(飲料水)と「下水」(汚水)の中間に位置するため「中水」と呼ばれます。
地方自治体の条例や「水の有効利用に関する指針」(国土交通省)で一定規模以上のビルに導入が
推奨・義務化されています。
水源の種類
- 雑排水利用型:手洗い・洗面・浴室の排水を処理して再利用。
- 雨水利用型:屋根に降った雨水を集め、ろ過・消毒して再利用。
- 併用型:雑排水と雨水の両方を水源とする方式。
なぜ必要なのか
日本の水道使用量のうち、トイレの洗浄水はオフィスビルで約30〜40%を占めています。
この用途には飲料水レベルの水質は不要であり、適切に処理した中水で代替できます。
上水の使用量を削減し、水道料金・下水道料金の節約と環境負荷の低減を同時に実現できます。
2. 構造や原理
基本的な処理フロー
-
原水槽:雑排水や雨水を一時的に貯留。
異物をスクリーンで除去。 - ろ過処理:砂ろ過、活性炭ろ過、膜ろ過(MF膜・UF膜)等で浮遊物質を除去。
-
消毒:塩素消毒で大腸菌群等を処理。
残留塩素0.1mg/L以上を維持。 -
中水槽:処理済みの中水を貯留。
ここからポンプで各階に給水。 - 供給:トイレ洗浄水、散水、洗車用水等として専用配管で供給。
中水の水質基準
国土交通省の「建築物における排水再利用・雨水利用ガイドライン」により、用途別の水質基準が
定められています。
- トイレ洗浄水:pH5.8〜8.6、残留塩素0.1mg/L以上、大腸菌群不検出
- 散水・清掃用水:同上(トイレ洗浄水と同等の基準)
- 外観:ほぼ無色透明であること
3. 素材・形状・規格
主要機器
- 原水槽・中水槽:FRP製またはコンクリート製の地下ピット。
- ろ過装置:圧力式砂ろ過器または膜ろ過ユニット。
- 消毒装置:次亜塩素酸ナトリウム注入装置。
- 給水ポンプ:中水専用の加圧給水ポンプ。
- 中水配管:上水配管と区別するため、配管表面に「中水」の表示が必要。
配管の識別
中水配管は誤接続防止のため、管表面に「中水」または「雑用水」の表示テープを貼付し、
上水配管と明確に区別します。配管の色は灰色や紫色で区別するのが一般的です。
4. 主に使用されている場所
- 大規模オフィスビル(延べ面積30,000m²以上で導入が推奨)
- 超高層マンション
- 商業施設・百貨店
- 空港ターミナルビル
- 大規模工場
- 公共施設(市庁舎・図書館等)
- 東京都では延べ面積30,000m²以上かつ便器30個以上で雑用水利用が義務
5. メリット・デメリット
メリット
- 水道料金の削減:上水使用量を20〜30%削減可能。
- 下水道料金の削減:排水量の削減により下水道料金も低減。
- 環境負荷の低減:水資源の有効活用でSDGsへの貢献。
- 渇水時の備え:上水の使用量が少ないため渇水時の影響を緩和。
デメリット
- 初期コスト:処理設備・配管の二重化で建設費が増加。
- 維持管理:水質検査・薬品補充・機器メンテナンスが必要。
- 誤接続リスク:上水配管との誤接続が発生すると衛生上の問題が生じる。
- 設置スペース:処理装置・貯水槽のスペースが必要。
6. コスト・価格の目安
おおよその相場(延べ面積30,000m²のオフィスビル想定)
- 中水処理設備一式:約1,500〜3,000万円
- 中水専用配管工事:約500〜1,000万円
- 年間維持管理費:約100〜200万円
- 年間水道料金削減額:約200〜400万円(規模による)
※投資回収期間は一般的に7〜15年程度です。
7. 更新周期と注意点・絶対にやってはいけない悪い使用方法
更新周期
ろ過装置のろ材は5〜10年で交換が必要です。膜ろ過の膜は7〜10年が交換目安です。
ポンプ類は10〜15年、制御盤は15〜20年での更新が目安です。
絶対にやってはいけない悪い使用方法
中水は飲料水ではありません。 トイレの手洗い器に中水を供給したり、 飲水用の蛇口に接続することは絶対に禁止です。 衛生上重大な問題を引き起こします。
クロスコネクション(上水と中水の配管を直接接続すること)は 最も重大な禁止事項です。 上水が汚染され、飲料水の安全性が著しく損なわれます。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
クロスコネクションにより上水が汚染されると、建物利用者の健康被害に直結し、建物管理者は
法的責任を負うことになります。
水質管理を怠ると中水から異臭が発生し、利用者からの苦情やトイレの使用回避につながります。
8. 関連機器・材料の紹介
9. 多角的なQ&A(20連発)
「このトイレは中水を使用しています」と書いてありますが安全ですか?
はい、安全です。中水はトイレの洗浄水として適切に処理された水で、消毒済みです。
直接触れたり飲んだりしなければ問題ありません。
中水は臭いがしますか?
適切に管理されていればほぼ無臭です。
わずかに塩素の臭いがする場合がありますが、これは消毒用の残留塩素によるもので
正常です。
中水の色が付いている場合は問題ですか?
着色がある場合は処理が不十分な可能性があります。管理者に報告してください。
基準では「ほぼ無色透明」であることが求められています。
雨水を活用しているマンションに住んでいますが、水道代は安くなりますか?
雨水をトイレ洗浄水に利用している場合、上水の使用量が減るため水道料金は低減されます。
管理費に反映される場合もあります。
雨水タンクを家庭に設置するメリットは?
庭の水やりや洗車に使え、水道代の節約になります。
自治体によっては雨水タンクの設置補助金制度があります。
中水配管と上水配管の識別方法は?
中水配管には管表面に「中水」「雑用水」のテープを貼付し、配管色を灰色または紫色で
区別します。バルブにも標識を取り付けてください。
中水配管の材質は上水と同じですか?
同じ材質(塩ビ管やステンレス管)を使用できます。
ただし飲料水用の認証は不要なため、コストを抑えた選定が可能です。
クロスコネクション防止の施工上の注意点は?
上水と中水の配管を絶対に直接接続しないことが原則です。
万が一の補給用に上水→中水槽への補給は必要ですが、エアギャップ(吐水口空間)を
確保してください。
雨水集水配管の注意点は?
屋根からの雨水を集水する場合、初期雨水(汚れた降り始めの雨)を排除する
「初期雨水排除装置」を設けることが推奨されます。
中水槽にはオーバーフロー管が必要ですか?
はい。中水の使用量が減少した場合や雨水の大量流入に備えて、下水管への間接排水とした
オーバーフロー管が必要です。
中水道の導入を判断する基準は?
東京都では延べ面積30,000m²以上かつ便器30個以上が義務化の基準です。
それ以下の規模でも、水道料金の削減効果と初期コストを比較して検討する価値があります。
雨水利用と雑排水利用、どちらが良いですか?
雨水利用は処理が簡易で水質が安定しますが、天候に左右されます。
雑排水利用は安定した水量が確保できますが、処理設備が大がかりになります。
立地と建物用途に合わせて選択します。
CASBEE等の環境認証での評価は?
中水道の導入はCASBEE(建築環境総合性能評価)やLEED等の環境認証で高い評価を受けます。
ESG投資やSDGsの観点からも導入価値があります。
中水の水量バランスはどう設計しますか?
中水の供給量(原水量)と需要量(トイレ洗浄水等)のバランスを設計します。
不足時は上水を補給し、過剰時はオーバーフローで下水に放流する計画とします。
中水道設備のスペースはどの程度必要ですか?
処理能力10m³/日程度の設備で、機械室面積として20〜30m²程度が必要です。
原水槽・中水槽のスペースを含めると、地下にまとまったスペースが必要になります。
中水の水質検査の頻度は?
残留塩素は毎日(または自動測定で常時監視)、pH・濁度・臭気は月1回、大腸菌群は
月1回の検査が推奨されています。
中水処理設備の日常管理で注意する点は?
塩素消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム)の液量確認と補充、ろ過装置の差圧チェック、
中水槽の水位確認を日常的に行ってください。
中水から臭いが出始めた場合の対処法は?
残留塩素の不足が主な原因です。
塩素注入量を確認・調整し、中水槽の清掃を実施してください。
改善しない場合はろ過装置の点検が必要です。
中水道の運用コストは見合いますか?
大規模ビルでは水道料金の削減額が維持管理費を上回り、経済的メリットがあります。
小規模な建物では採算が合わない場合もあるため、個別にコスト比較が必要です。
中水道の廃止は可能ですか?
条例で設置が義務づけられている場合は原則廃止できません。
義務化対象外の物件であれば、中水配管を上水に切り替える工事で廃止は可能ですが、
環境面でのデメリットがあります。