大気汚染防止法(石綿規制)とは?
解体・改修工事の石綿飛散を防ぐ、2022年大幅改正の重要法令
【超解説】とても簡単に言うと何か?
大気汚染防止法とは、「工場から煙を出しすぎないようにしよう」、「建物を壊すときに有害な
アスベスト(石綿)を空中にまき散らさないようにしよう」という、きれいな空気を守るための
法律です。
建設業においては、建物の解体やリフォームをする際に、「アスベストが含まれていないか事前に
調査するルール」として、非常に厳しく規制されています。
1. 基本概要
そもそも何か
国民の健康を保護し、生活環境を保全するため、工場や事業場からのばい煙(すす等)や
揮発性有機化合物(VOC)、特定粉じん(石綿など)の排出を規制する法律です。
建設業において最も影響が大きいのは、解体・改修工事に伴う「石綿(アスベスト)
飛散防止対策」の規定です。
なぜ必要なのか
高度経済成長期の深刻な公害問題(四日市ぜんそく等)を契機に制定されましたが、近年は
「静かな時限爆弾」と呼ばれる石綿(アスベスト)による健康被害(中皮腫や肺がん等)を
防ぐことが最大の目的となっています。
目に見えない微細な有害物質が大気中に広がるのを防ぎ、作業員や周辺住民の命を守るために
不可欠な法律です。
2. 法律の仕組みと適用基準
届出と調査の仕組み
解体・改修工事を行う場合、元請業者は工事開始前に、「石綿が含まれた建材が
使われていないか」を事前調査することが義務付けられています(2022年4月完全義務化)。
また、一定規模以上の工事(解体なら床面積80㎡以上、改修なら請負金額100万円以上)の
場合は、石綿の有無に関わらず、行政へ電子システムで報告しなければなりません。
工事における役割分担
それぞれの責任が以下のように明確に定められています。
・発注者:調査費用の負担・元請業者:事前調査と届出、作業計画の策定・下請業者:計画に
沿った適正な除去作業の実施
3. 規制の対象物質・基準
石綿含有建材のレベル分類
発じん性(飛散しやすさ)によって、規制の厳しさが3つのレベルに分類されています。
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レベル1(著しく高い):吹付け石綿など。
最も厳重な隔離・ばく露防止対策が必要。 -
レベル2(高い):石綿含有保温材・断熱材など。
レベル1に準ずる厳しい措置が必要。 -
レベル3(比較的低い):石綿スレート板やPタイルなど。
切断や破砕をしない限り飛散しにくいが、湿潤化等の対策が必要。
4. 対象となる工事や現場
あらゆる解体・改修工事が対象
戸建て住宅の解体、マンションの大規模修繕、オフィスビルの内装解体、工場設備の更新など、
既存の建材に触れる(壊す、剥がす、穴を開ける)作業は原則すべて対象となります。
建築物だけでなく、煙突や配管、ボイラー設備などの「工作物」の解体・改修も対象に
含まれます。
5. 法令遵守のメリット・デメリット(リスク)
メリット(長所)
法律を遵守し、正しい知識でアスベスト対策を行うことで、作業員自身の健康を守るとともに、
周辺住民からのクレームや通報を防ぐことができます。
適正な処理体制を持つことは、企業としての信頼性(コンプライアンス)向上に直結します。
デメリット(短所・弱点)
事前調査や電子報告に手間と時間がかかり、行政への届出期間(作業開始の14日前等)を考慮した
工期の設定が必要です。
また、アスベストが発見された場合の除去工事や、特別管理産業廃棄物としての処分費用は非常に
高額になります。
6. コスト・価格の目安
法令遵守のために必要な石綿調査および対策関連の費用の目安です。
おおよその相場(一般住宅の場合)
- 事前調査費用(書類・目視):30,000円〜100,000円程度
- 検体分析費用(石綿の有無を調べる):1検体あたり30,000円〜50,000円程度
- レベル3建材の除去・処分割増費:100,000円〜300,000円程度加算(面積による)
合計目安:調査だけで数万円、除去が伴うと数十万〜数百万円のコスト増となります。
7. 届出の期限と絶対やってはいけない悪い事例
届出の期限
レベル1またはレベル2の特定粉じん排出等作業を行う場合は、作業開始の「14日前」までに
都道府県知事等へ届出をしなければなりません。期限を過ぎてからの工事開始は違法です。
絶対にやってはいけない悪い使用方法(NG事例)
「少しの解体だからバレないだろう」
「アスベストの調査費を払いたくないから適当にやっておけ」
と、事前調査を怠ったり、アスベスト建材を普通の廃材として
バキバキに叩き割って処分したりする行為は絶対にやってはいけません。
悪い使用方法をするとどうなるか(末路)
周辺住民や作業員を致命的な健康被害のリスクにさらし、発覚した場合は「最大で
懲役6ヶ月または罰金50万円」の刑事罰が科せられます。
さらに行政処分による工事停止、企業名の公表、社会的信用の完全な失墜を招き、会社が倒産する
引き金となります。
8. 関連法令・資格の紹介
大気汚染防止法と連動して建設現場に適用される重要な資格や法律です。
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建築物石綿含有建材調査者:事前調査は、2023年10月以降、必ずこの有資格者が
行わなければなりません。 -
石綿作業主任者:実際に石綿の除去作業を行う現場において、作業員を指揮・監督するために
選任が必要な国家資格です。
9. 多角的なQ&A(20連発)
大気汚染防止法は車(排ガス)の法律ですか?
自動車排ガスも一部含まれますが、建設業では主に「アスベストの飛散防止」の法律と
して認知されています。
自宅のリフォームでもアスベスト調査は必要ですか?
はい。壁に穴を開ける程度の工事でも、2006年以前の建物の場合は原則として事前調査が
必要です。
アスベスト調査の費用は誰が払うのですか?
法令により、建物の所有者(発注者)が適正な費用を負担する義務があります。
「みなし判定」とは何ですか?
高額な分析費用をかけず、「アスベストが含まれているもの」と仮定(みなして)厳重に
処分することです。
アスベストを吸い込むとどうなりますか?
数十年後に中皮腫や肺がんなどを発症するリスクがあり、「静かな時限爆弾」と
呼ばれています。
電子報告システムには誰が入力するのですか?
原則として元請業者が、PC等から「石綿事前調査結果報告システム」へログインして
入力します。
報告の対象となる金額(100万円以上)には消費税は含まれますか?
はい。材料費等を含めた請負代金の総額(税込)で判断します。
レベル3の建材(スレート等)なら割って解体しても良いですか?
原則禁止です。
ボルトなどを外して原形のまま取り外す(手ばらし)ことが法令で求められています。
調査者(有資格者)が社内にいない場合はどうすれば?
調査資格を持つ専門の調査機関や、他社に委託する必要があります。
建材の一部を削るだけの軽微な工事でも報告が必要ですか?
金額が100万円未満等であれば行政への報告は不要ですが、事前調査と結果の現場掲示は
必須です。
事前調査結果の保存期間は何年ですか?
工事終了後から「3年間」の保存が義務付けられています。
「大気汚染防止法」と「石綿障害予防規則」の違いは?
前者は周辺住民(環境省管轄)、後者は作業員(厚労省管轄)を守る法律で、両方の
遵守が必要です。
事前調査をしなかった場合の罰則は?
大気汚染防止法違反として、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
2006年(平成18年)以降に着工した建物でも調査は必要?
着工日を確認できる公的書類があれば、書面調査のみでアスベストなしと証明可能
(現地調査は免除)です。
レベル1、レベル2の作業計画は誰が作成しますか?
元請業者が主体となって作成し、発注者に説明した上で都道府県知事に届出を行います。
工事中に予期せずアスベストが発見されたら?
直ちに作業を中止し、追加の調査や届出、計画変更手続きを行わなければなりません。
施主がアスベスト調査費用の支払いを拒否したら?
法令違反となるため工事を請け負うことはできません。
発注者の配慮義務も法律に明記されています。
レベル3の除去で湿潤化できない場合は?
高性能なHEPAフィルター付きの真空掃除機で、粉じんを吸引しながら作業するなどの
代替措置が必要です。
古い釘やネジが錆びていて「原形での取り外し」が不可能な場合は?
やむを得ず切断・破砕する場合は、十分な湿潤化を行い、周囲を隔離シートで養生する
必要があります。
大気汚染防止法に基づく立入検査は突然来るのですか?
はい。
事前報告のあった現場等に対し、自治体の担当者が抜き打ちでパトロール(立入検査)に
来ることがあります。